サイエンス

2024.01.14 11:00

アシモフから着想を得たグーグルの「ロボット憲法」、人との生活に溶け込むために

よりよく、より速く、より賢く

自律ロボット工学の研究における主目的の1つは、高水準の普遍的な目標(「浴室を清潔に保つ」など)を遂行できる自律型ロボットを作り、目標を達成するための計画を立てることだ。iRobotの床掃除ロボット、スクーバなどは、ペットの抜け毛やこぼれた汚れの拭き掃除において、すでに優れた仕事をしている。しかしグーグルが見据えているのは、何が必要かを言えば、汎用アシスタントロボットがその先の仕事を苦もなくこなし、機械学習によって改善を続けるような未来だ。

電子機器の見本市であるCES 2024で、LGは会話やスマート家電の制御をこなし、ペットを見守り、窓の閉め忘れや電気の消し忘れを通知できる二足歩行の家庭用AIロボットを披露した。一方サムスンは、家電の管理や電話の応答を行い、壁や床にビデオを映せる車輪つき小型ロボットコンパニオン「Ballie」の最新版を公開している。Ballieはユーザーの行動パターンや習慣に基づいて学習する。

しかしこれは、家庭用ロボット革命の始まりにすぎない。研究室の中では、グーグルのチームが学習モデルのRobotics Transformers(RT)を使い、ロボットが自分たちの環境をよりよく理解し、より速く動き回るための新しいシステムを開発している。

ロボット憲法では、どのDeepMindのロボットであっても人間や動物などの生き物と関わる仕事をしないと決められている。さらに、ナイフのような鋭利なものを遠ざけ、コンピュータやタブレットなどの電子機器とも接触しない。

3つの新システム

AutoRTのほかに、グーグルのDeepMindチームは、ロボットに必要な計算量を減らして意思決定を速くするSARA-RT(Self-Adaptive Robust Attention for Robotics Transformers)を発表した。そして、RT-Trajectoryはロボットアームのグリッパーの軌跡をビデオにオーバーレイ表示する。いずれも、ロボットがよりよく仕事を遂行するための実用的なヒントを視覚的に提供するものだ。

DeepMindチームは、ルールだけでは操作の安全性を確保できないことを認識しており、テストの際には、リスク評価や物理的制御などのロボット学習に共通する安全手順も遵守している。

たとえばDeepMindのロボットは、関節部分にかかる力が一定の閾値を超えると自動的に停止するようにプログラムされている。また、ロボットが閉鎖空間に閉じ込められているときを除き、物理的な停止ボタンを常に押せる人間の管理者が、活動中のすべてのロボットに目を光らせている。

ロボットの急速な進歩を踏まえ、憲法修正への道は開かれているとDeepMindチームはいう。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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