欧州

2024.01.11 10:00

無謀な突撃繰り返すロシア部隊、出撃車両の9割は戻らず ウクライナ南部


「クリンキ地区では、ウクライナ軍は電子面で優位に立っているようだが、これはドローンで優位性を持っていることを意味する」と軍事アナリストのドナルド・ヒルは同僚のトム・クーパーが運営するニュースレターで指摘した。「彼らはロシア軍のドローンを妨害し、地雷や投下弾、自爆型ドローンを使ってロシア軍の車両を破壊している」

ヒルは「ロシア軍の戦線のずっと後方で、電波妨害装置や対砲兵レーダー、ロケット発射機、対空システムが攻撃されている」とも指摘した。りゅう弾砲やロケット砲を発射するにはドローンに標的を偵察してもらう必要があるため、ウクライナ軍のドローンでの優位性は大砲での優位性につながっている。

そのため、橋頭堡へのロシア軍の攻撃はいつも同じ結末を迎える。攻撃を仕掛ける部隊は地雷を踏み、砲火を浴び、 目的地までもうすぐのところで自爆型の小型ドローンの大群に囲まれる。ロシア軍はドローンや大砲で部隊を救うことはできない。


この状況は、数字が物語っている。昨年10月中旬以降、ロシア軍はクリンキ周辺で18両の戦車と58両の戦闘車両を含め、少なくとも152の重装備を失った。ウクライナ軍の損失数は31で、そのほとんどが大砲だ。

ウクライナ軍は少なくとも50隻のボートも失っている。ボートが最も攻撃を受けやすいのは水上だ。「ウクライナ軍が数百mほどしか展開できていないのは、ロシア軍の攻撃のせいではなく、ドニプロ川両岸への攻撃と、川を行き来して物資や弾薬、交代要員、負傷者を運ぶボートへの攻撃のためだ」とヒルは指摘した。

ロシア軍がクリンキの橋頭堡を潰す最も簡単な方法は、ウクライナ軍がドニプロ川を渡れなくして、左岸に展開する海兵部隊の補給源を断つことだろう。

だが、橋頭堡の背後への水上攻撃にはドローンが必要であるものの、ロシア軍はドローンを飛行させられない状態にある。空からも水上からもウクライナ軍の補給線を断ち切れないロシア軍は、地上で攻撃を続けている。

あるロシア人ブロガーは、ロシア軍が最近実施した攻撃について、旧ソ連軍のゲオルギー・ジューコフ将軍にちなみ「大胆なジューコフ作戦」と呼んだ。ジューコフは第2次世界大戦中、ドイツ軍の地雷原を兵士に徒歩で越えさせたと主張し(おそらく虚偽の主張だ)悪名を得た人物だ。

冒頭で紹介したロシア人ブロガーは、クリンキに展開するウクライナ軍の海兵部隊を攻撃するために地雷やドローン、大砲の攻撃をくぐり抜けようと試みては失敗を繰り返し、そのたびに車両10両のうち9両を失っている突撃隊を、独特な言葉で表現している。

その言葉とは「一時的な部隊」だ。


forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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