テクノロジー

2024.01.07 09:00

「人の精神をデジタルで保存」する技術が議論の的になる心理学的理由

Getty Images

しかしながら、こうした感覚のレベルが低く、なおかつ死後の世界の存在を確信していない人の場合は、精神アップロードへの許容度が、無神論者と同じくらい高かった。言い換えれば「自分の人生には意味がある」という信念、さらには「自身の残したレガシーが、象徴的なかたちで死後も生き続ける」という考えがあれば、たとえ超自然的な死後の世界の存在に確信が持てなくても、デジタル的な手段で命をながらえさせる手段の必要度が下がるということだ。
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今回の研究では「自分の人生は有意義だ」という感情が、霊的存在への信仰や信心深さとつながりがあることが明らかになった。その一方で、こうした感情を持つ者は、精神のアップロードを容認しない傾向があり、しかもこの傾向は、神の存在を信じる、信じないを問わず共通していた。これはおそらく「人生は有意義だ」という感情によって、死に関連する不安がトーンダウンしたことによるものだろう。

逆説的にも思えるが「人は死を逃れ得ない」ということを悟ることで、かえって人生の意味が強まることがある。命に限りがあることを認識すれば、人は1分1秒を大事にし、周囲の人との絆を深め「心の底から充実感をもたらすこと」を追求しようとするようになる。

「命は永遠に続かない」という認識は「今、この時」の豊かさを味わいたいとの思いにつながる。そのとき、デジタル的手段で永遠に存在し続ける道を追求することには魅力を感じられなくなるのだろう。

結論

精神をアップロードするテクノロジーに対する道徳的な観点からの容認あるいは反発は、霊的存在や宗教的なものに関するその人の信念、人生の重要性に対する認識、人が死を逃れ得ない存在であることへの恐怖あるいは認識と密接に結びついている。
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精神のアップロードのような人の意識を転送するテクノロジーの進展は、私たちに命や死、ひいては変わり続ける世界における人間存在の再定義まで、さまざまな深い実存的な問いについて考えるよう促している。

forbes.com 原文

翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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