こうなると校舎が足りなくなるので、児童たちの一部は仮設校舎で学校生活を送ることになる。狭いエリアに急激に人口が増えるとインフラ面での歪みの出るという弊害が生じるのだ。
しかし、タワーマンションの建設が校区内で減ったこともあり、昨年から生徒数の増加はほぼ止まった。
人口増に「逆張り」をしている神戸市
神戸の街は1960年代から70年代にかけて港湾業と製造業を中心に発展した。西日本各地から人々が流入し、毎年3万人から4万人の人口増があった時代があった。そこで神戸市は、六甲山の北側や西側に大規模な住宅団地を造成することで、急増する人口の受け皿とした。だが、いまやその住宅団地も住民が高齢化し、空き家も目立っている。そこで、注力しているのが、郊外にある鉄道駅周辺の公共施設や商業ビルのテコ入れだ。
というのは、かつては住宅団地に住む人の足であったJRや私鉄、市営地下鉄といった鉄道網が整っているので、それを賢く使おうという作戦だ。名谷駅や西神中央駅では、駅周辺の再整備にリンクする形で、住宅など民間投資も増えている。
一方、三宮駅周辺では再整備が進んでおり、西日本最大規模のバスターミナル、JR三ノ宮駅の駅ビルなどが完成する2030年までに、街の在り様は大きく変化することになる。
三宮はあくまで働く場所であり、買い物やアートシーンを楽しむ非日常のエンターテインメントの空間にするのが、神戸市の基本方針だ。これはタワーマンションの規制による都心居住の抑制と完全に符合している。
確かに、都心居住を後押しすれば、目先の人口は増えるだろう。街の中心部にタワーマンションを誘致しても、人口増を図ろうとする自治体もある。
しかし、その人口増に対して、言わば「逆張り」をしているのが神戸市だ。街全体のバランスをとって、持続可能性を維持する。そのために、市場原理に任せるのでなく、行政が街づくりに大胆に切り込む一石を投じたわけだ。
吉と出るのか凶と出るのか、結果が出るまでには時間がかかるが、この新しい手法には全国から注目が集まりつつある。
連載:地方発イノベーションの秘訣
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