経済・社会

2023.07.31 17:30

「継承しないお墓」という選択肢。神戸市の合葬型墓園に注目

先祖から受け継いだ墓は子や孫が引き継ぐものという考え方が一般的だが、このところそのような考えを持たない人たちも増えている。核家族化や引っ越しなどによって、墓参りが物理的に難しくなったり、維持管理することを負担に感じたりする人が増えているようだ。

神戸市に4箇所ある市立墓園では、7年前から墓の撤去が新規の貸付件数を上回っている。死者数が毎年増えているのに、墓の数は減っているのだ。いわゆる「墓じまい」が急速に進んでいることを示している。

墓じまいをすると、遺骨は別の場所に移されるか、宗教法人などが管理する永代供養施設に収められる。また散骨などの方法がとられることもある。

2万柱が収納可能な鵯越墓園

そんななかで、日本有数の広さを誇る神戸の「鵯越(ひよどりごえ)墓園」に、2018年につくられた「合葬墓(がっそうぼ)」が注目を集めている。

鵯越といえば、源平合戦で、源義経が一の谷(現在の須磨海岸近く)に本陣を構えた平家を奇襲するときに、馬で急坂を駆け下る前に通過した場所だ。平家滅亡につながる戦いの場であった。

鵯越の合葬墓

鵯越合葬墓からの明石海峡の眺望


この合葬墓は、眼下に神戸の街、そして明石海峡から瀬戸内海という絶景が見渡せる高台にあり、2万柱の遺骨が収納できる。これを整備して管理しているのは神戸市だ。

神戸市では、一度、墓に埋葬した遺骨を他の墓などに移し替える「改葬」の件数が2018年から急増し、政令市のなかでも群を抜いて多い。鵯越墓園の合葬墓への改葬が増えたからだ。今年3月までに、約1万700柱の遺骨がここへの埋蔵を許可されている。

鵯越の合葬墓

鵯越の合葬墓


ここに収納された遺骨は、布袋に入れられたまま他の人の骨と一緒に地下にある合葬施設に安置される。いったん収めると遺骨を取り出すことはできない。だが、申込時に5万円を支払うだけで、その後の維持費はかからない。生前に申し込んでおくこともできる。

献花台から供花できる

献花台から供花できる


さらに追加支払いをすると、骨つぼのまま一定の期間は個別に安置され、期限がくると合葬施設に移す方法を選ぶこともできる。骨つぼのある場所へ遺族の立ち入りはできないが、期限内なら遺骨の返還も受けられる。

個別安置施設(遺族の立ち入りはできない)

個別安置施設(遺族の立ち入りはできない)

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文=多名部重則

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