自然葬にはそれなりの制約が
一方で、「自然葬」という、自分の遺骨を残さずに自然に還す形式を望む人もいる。遺骨を海に撒いたり、樹木の根元に埋めたり、宇宙空間への散骨という選択肢すらある。ただ気になるのは、このような自然葬が法律的に許されているかだ。そこで、神戸市役所の墓園の担当者に聞いてみた。
「法律では遺骨は『墓地』に埋蔵するという規定があります。なので、自宅の庭に遺骨を撒くのは違法です。それどころか、刑法上の死体遺棄罪になります。ところが、最近は遺骨を砕いて『散骨』するケースが増えてきました。
すると国からは、これまで法律が想定していなかっただけで、墓地以外の散骨を禁止してはいないという見解が示されました。さらに、葬送のための節度が伴えば、死体遺棄罪にも当たらないという解釈も定着しています」
散骨には他の問題も残されている。海への散骨は漁業をする人から嫌がられたり、山などへの散骨も住民の反対により自治体によっては条例で禁止されることもあるのだ。自然葬には、それなりに制約があるといえる。
そのような自然葬に対する状況もあり、合葬墓へのニーズが確かに存在することを掴んだ神戸市は、将来を見据え今後の市の墓園をどうしていくべきかを検討するために有識者を召集した。
今年4月に公表された報告書では、新たに2つのタイプの墓を整備することが提案されている。
1つは、「樹木葬型の合葬墓」である。石材などでつくられた墓標の代わりに樹木を植えて、その地中に遺骨を埋葬するというものだ。
もう1つは、「期限付き墓地」だ。区画分けした土地を期限付きで墓地として貸し出す。期限までは一般の墓地と同じようにお墓参りもできる。そして、例えば20年といった期限を区切って、合葬施設に遺骨を移し替えるというものだ。
通常の墓はお参りする人がいることを前提にしている。が、生涯未婚率が高まるとともに、結婚しても子どもがいるのは当たり前でなくなってきた。さらに、核家族化の流れが墓自体の承継を難しくしている。
そんななかで、自治体はどのような役割を担うのであろうか。
宗教法人や公益法人が整備・運営する永代供養・合葬施設が、現実には多く存在する。ところが、国の通知では、「墓地の経営は、市町村がするのが原則で、それができないときには宗教法人・公益法人だけができる」とある。
こう定められたのは、自治体の管理であれば、誰もが安価で利用でき、半永久的に安定した運営ができるということを踏まえてのことであろう。
言い替えると、自治体としては墓の問題に正面から向き合わざるを得ない立場にあるのだ。
まもなく、墓参りの時期がやってくる。この記事では、神戸市がこれからの墓をどう考えているのかを紹介した。これから墓のことを考えていくうえでの一助になればと思う。
連載:地方発イノベーションの秘訣
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