米国防総省が最近の防衛産業基盤評価で指摘したように、米国経済の「着実な産業空洞化」により、同省は軍事関連で使用される重要な鉱物や部品の国内生産を強化することに、ますます関与せざるを得なくなっている。
あまりに多くの企業が製造拠点を国外に移したため、軍需サプライチェーンの大部分において、生産に不可欠なものの国内供給源は1つしか残っていない。例えば、フェアバンクス・モース・ディフェンスは、軍艦に使用される大型ディーゼルエンジンを米国で生産する唯一のメーカーだ。かつては6社が手がけていた。
米国内の一部の製造業者は新しい技術に多額の投資を行っているが、中国との競争に敗れつつあることを示す根拠がある。中国企業は往々にして米企業より先にドローン(無人機)のような新しい市販品の市場投入を行ったり、米企業が張り合えないような価格で商品を販売したりしている。
これは米中間の軍事競争の将来にとって良い兆候ではない。米国防総省は、軍事的ライバル国より一世代先行し続けることを可能にするイノベーションを求めているが、米国の製造業がそうした優位性を提供できる可能性は低そうだ。世界の製造業に占める中国のシェアは今や米国、日本、韓国の合計より大きい。
国防総省は、ソフトウェアやサービスを提供する米国企業に頼ることで、軍事分野での優位性を維持できると考えていた。デジタル革命により、賢いソースコードを用いてクラウドコンピューティングや人工知能(AI)などの分野で世界をリードするイノベーターのエコシステムが米国内にできた。
ソフトウェアの世代は年単位ではなく月単位で移り変わっていくため、最先端のソフトウェアによって米軍が戦場で敵軍の数十年先を行くことはないだろうが、少なくとも AIなどの分野では米国が中国に先行し続けられる可能性はある。
だが、中国企業は中核市場において米国のビッグテック(超巨大テクノロジー企業)に挑み始めている。その最もよく知られている例が、中国発SNSのTikTokによる、これまで同業界を支配していたインスタグラムへの挑戦だ。TikTokは数年連続でダウンロード数が世界で最も多いアプリとなっている。