「Heatbit mini」は、人工知能(AI)の大規模言語モデル(LLM)のトレーニングや、企業のAIシステムの維持にコンピューティングパワーを開放することで、自宅を暖めながら、報酬が得られる電気ヒーターだ。購入者には、最大で月額28ドル(約4000円)の報酬が支払われる。
米スタートアップ企業Heatbit(ヒートビット)のアレックス・ブサロフ最高経営責任者(CEO)は「私たちが手がける事業は、ゼロ・エネルギー・コンピューティングのプロジェクトです」と語った。筆者は、ポルトガルの首都リスボンで先日開催されたテクノロジーカンファレンス「ウェブサミット」で、ブサロフに話を聞いた。
ブサロフによれば、ビットコインの採掘とAIのトレーニングの電力消費量はここ7年で100万倍に増加し、英国全体のエネルギー消費量を突破したという。そして、そこから生まれる熱は無駄になり、データセンターを冷却するための追加のコストも生じている。
ヒートビットのソリューションは、AIが使用するコンピューティングパワーを何千もの家庭に分散して稼働させ、そこから発生する熱を暖房に利用するというものだ。
同社によると、従来のデータセンターが毎時1キロワットの電力を消費する場合、冷却のために追加で毎時0.5キロワットのコストがかかる。人々が自宅やオフィスの暖房に消費する電力を毎時1キロワットとすると、データセンターとの合計で毎時2.5キロワットが消費されていることになる。
ヒートビットのプロダクトは、毎時1キロワットの電力消費量で暖房とAIのトレーニングの両方をこなすことにより、エネルギー消費量を60%削減するとされる。「同じエネルギーを2度利用することができる」とブサロフは語った。
筆者が暮らすカナダのブリティッシュコロンビア州では、安価でクリーンな水力発電のおかげで、この製品の電気代は月32ドルとなるため、月額28ドルの報酬により電気代は実質ゼロに近くなる。一方、米国の平均的な電気料金であれば、月40ドルの電気代を支払い、月額28ドルの報酬を得られることになる。
Heatbit miniは、200億個のトランジスタを持つ55個の5ナノメートルチップを使用して計算タスクを実行し、400平方フィート(約37平方メートル)の部屋を暖められるという。空気清浄機としても使用可能で、HEPAフィルターを備えている。また、運転音は40デシベル以下と冷蔵庫よりも静かだ。毎月の報酬の額は、専用アプリで確認できる。
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