2023.12.26 15:30

人と自然のバランス。英国のホテルで感じる「本物の洗練」

鈴木 奈央
コンセプトが面白いのは、庭園を見渡す高台にあり、朝食と昼食のみ営業の「ガーデン・カフェ」だ。

味付けは他の2店よりも、デザートの甘さを控えるなど、ヘルシーなアプローチが印象的。こちらも、前菜、メイン、デザートのコースだが、メインは野菜の料理(1品だけ鶏肉の出汁を使っている以外は、全てベジタリアン)で、サイドディッシュとして肉などの動物性タンパク質をオプションとしてつける形。カジュアルながら、ベジタブル・ファーストの、これからの時代性も感じる店だ。
料理の一例。右はメインの野菜のリゾットと「サイドディッシュ」の肉。提供される皿の大きさも違います。

料理の一例。右はメインの野菜のリゾットと「サイドディッシュ」の肉。提供される皿の大きさも違う。

どの店でも、料理のカロリー表記がされているのも印象的だった。

人も自然も「ありのまま」でいられる程よい距離感

広い敷地なので、移動はカート。しかも、自分で運転する。私有地内なので、成人で、健康などに特別問題がなければ誰でも、免許がなくても運転が可能。自分が農園主になったような、気分を味わえる。

今回は、もともと門番の部屋だったという「ゲート・ロッジ」にステイした。ベッドルームも2つあり、家族や友人との滞在にも良さそうだ。

なんといってもキッチンがついているのが嬉しい。真っ白なリネン、ピカピカに磨かれた銅の鍋やフライパンなど、ディテールにも こだわりが。長期ステイして、レストランでだけでなく、ファームショップで購入する野菜や果物、卵などを使って料理するのもいいかもしれない。


チェックインすると、見事なサワードゥのパンと、ショップで販売しているオリジナルブランドのリンゴ入りのショートブレッドなどが手配されていた。冷蔵庫には、自家製シードルと、近隣で作られた絶品の手作りバターが入っている。

冷暖房もついているが、暖炉の薪にマッチで火をつけて夕食後のひと時を過ごせば、まるでマナーハウスに暮らす、往時のやんごとない人々になった感覚を味わえるだろう。もちろん、カートで2分も走ればメインの館に辿り着けるし、必要なものがあれば電話一本で届けてくれる。

このほど良い距離感は、オーナー夫妻の自然との関わり方とも共通している。人も自然も「ありのまま」でいるためのバランスと距離感。そんなところにも大人の余裕のセンスの良さがあり、本物の洗練を感じる場所だ。

文・写真=仲山 今日子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事