人間のために働いてくれる機械がどんどん増えているおかげで、私たちは驚くほどの豊かさを手にしている。では、その機械が人間のために思考してくれるようになったとしたらどうだろう?
それは、優れた人間の知性が、機械化された天才という味方を得て、武装することを意味する。そして、おそらくは当初の予想よりずっと早く、人間の命を奪うがんを過去のものにするのに欠かせない情報へとたどり着くだろう。
そうなれば、人間はいまよりもっと健康で、ずっと長生きできることになり、ひいては、働く期間もずっと長くなる。「70代になったころには引退しているだろう」とベリチックが発言したのは、70代という年代がかつてもっていた意味合いにもとづいている。そうした健康年齢は固定されていない。知識の増加に合わせて、70代は、より「若い」方向へと向かっているのだ。仕事が好きで、健康体で、楽しく働いているなら、リタイアする必要などあるだろうか。
もちろん、こうした進歩は医療だけにとどまらない。機械が医師のために考え、行動してくれるのであれば、医師以外のほぼすべての職業のためにも、思考し、行動してくれるだろう。ベンチャーキャピタリストのビノッド・コースラが言ったように、人工知能(AI)の台頭で、80%の仕事の80%は自動化されるだろう。素晴らしいことだ。
そうした未来について考えてみてほしい。人間が担う仕事の80%が、機械によって軽減されたら、私たち全員の生産性がどれほど上がるだろうか。
だからといって、私たちが仕事にあぶれることはないだろう。なにしろ、トラクターや自動車、コンピューター、インターネットが登場しても、人間が失業することはなかったのだから。これまでに成し遂げられた進歩によって、一人一人の専門性が上がり、人間はより優れた労働者となった。
いま述べた、ロボットがいずれは人間の仕事の80%を担ってくれるという点について考えてみよう。仕事には、楽しい部分もあれば、嫌な部分もあるのではないだろうか。これにはおそらく、読者の皆さんも、ベリチックらアメフトのプロも同意できることだろう。つまり、自動化によって、人間の仕事の生産性が大きく向上するばかりか、私たちの仕事がいまよりもはるかに改善するということだ。仕事を分化し、専門化することによって、そういう利点が生じ得る。