先週、ソーシャルメディアで共有された動画には、爆発反応装甲のブロックをうろこのように全身にまとい、砲塔上部をドローン(無人機)対策のケージ(鳥かご装甲)で覆い、車体前部に地雷除去用プラウまで取り付けたT-62が映っていた。60年ほど前に製造され、最近改良されたこの戦車は、ウクライナ東部ドネツク州の廃墟化している町、マリンカ周辺に展開しているロシア軍の旅団か連隊に所属しているらしい。
数日前には、かなり大幅な改良が加えられたT-62の写真も公開されていた。乗員4人・重量42tのこのT-62は、現代的なT-90戦車から借用したとみられる爆発反応装甲を備え、主砲の115mm滑空砲の砲手用照準器も、そこそこ新しい1PN96MT-02に取り替えられている。
もしこれらの追加装甲にデメリットがあるとすれば、それは重量がかさむことだろう。改良版のT-62はどれもエンジンは元の620馬力ディーゼルエンジンのままとみられ、現代的な戦車よりはるかに非力だ。したがって、追加装備で重くなった分、速度は遅くなる。
Crews of T-62M tanks of Vostok Group of Forces provide motorised riflemen advance near Novomikhailovka
The upgraded T-62M tanks, on which the servicemen from Buryatia work, are equipped with new thermal imaging sights, guidance systems, means of protection, and mine exploders. pic.twitter.com/L1sGSm4R1x — 𝓐𝓵𝓫𝓮𝓻𝓽 𝓢𝓪𝓶 (@AlbertSam786067) December 1, 2023
疑問が残るのは、T-62は長時間戦闘を続けられるほど、乗員が中で過ごしやすいものなのかという点だ。ロシアはウクライナで拡大して1年9カ月になる戦争の最初の数カ月で、最良の戦車を1000両も失い、新しい戦車の増産も思うように進まなかった。そのため、やむを得ず古いT-62数百両を保管庫から引っ張り出し、ウクライナ南部の前線に急いで送り込んだ。
2022年秋、反転攻勢に出ていたウクライナ軍の旅団は、これら改良前のT-62を数十両撃破し、さらに数十両を鹵獲した。ウクライナ側はその一部を工兵車両や歩兵支援車両に改造したほか、一部は戦車のまま使うため領土防衛旅団に引き渡した。
今年春、ウクライナのテレビ局「5カナル(チャンネル5)」は領土防衛旅団のT-62の乗員たちにインタビューしている。元ロシア軍の老朽化した戦車は、彼らのお気に召すものではなかったようだ。「T-62には全体的に第2次世界大戦の名残があるんですよ」とある乗員は語っている。
乗員たちは現代的な無線装置がないことも嘆いている。操縦士はとくに操縦席の狭さにうんざりし、「とても窮屈」と不満をこぼしている。彼らは皮肉を込めてこの戦車に、ウクライナが支援国から供与されたドイツ製の現代戦車の名前をとって「レオパルト2」という愛称をつけている。