ドイツが供与した重量31トンのマルダーを入手した空中強襲旅団は、第82旅団に続いて2個目となる。第82旅団がウクライナ南部で攻勢をかけている一方で、第25旅団は東部クピャンスク周辺で防御にあたっている。
ウクライナ軍の空中強襲旅団は、かつてはヘリコプターや輸送機で戦場に降り立つ訓練を行っていた。だが、ロシアがウクライナに対して仕掛けた1年9カ月にわたる戦争の前線では、それは非現実的だ。そこで空中強襲旅団は、実質的に機械化旅団となった。
第25旅団では、マルダーは旧ソ連製のIFVであるBMD-2に取って代わっているようだ。これは大幅なアップグレードとなる。BMDは、空輸できるよう、重量が12.5トンに抑えられた。つまり、軽量で小型だ。
だが歩兵にとって、自らを戦闘場所へと輸送し、降りた後は戦闘を支援してもらうIFVに、軽さや小ささは必要ない。
マルダーは新しい車両ではない。むしろ、世界のIFVの中で最古の部類に入る。ドイツの防衛企業ラインメタルは1969年から、2000両以上のマルダーを生産した。
だがマルダーは走行速度や防御力、火力、能力のバランスが取れており、古いにもかかわらず今も世界最高峰のIFVだ。乗員3人と歩兵6人を乗せ時速約64kmで走行が可能で、戦車に追随し、銃撃戦の最中に歩兵を降ろし、搭載する20mm砲で歩兵を支援することができる。
第82旅団のある兵士は、BMDと同じく旧ソ連が設計したIFVであるBMP-1やBMP-2と比べると、マルダーは「(SF映画シリーズの)『トロン』のようだ」と語った。BMP-1とBMP-2は装甲が薄く、攻撃を受けると吹き飛んだり燃えたりしやすいことで不評を買っている。
第82旅団のマルダーは夏以降、南部での戦闘で使用され、高い生存能力を証明している。マルダー40両のうち、同旅団がこれまでに失ったのはわずか3両だ。
損失が少ないということは、追加供与されるマルダーを損失の補填に当てるだけでなく、新しい旅団に回すことができるということだ。ドイツは当初、マルダー40両をウクライナに供与することを約束。半分をドイツ陸軍から、残りをラインメタルの余剰車両から調達するとした。
だが、ラインメタルはこの夏、状態が良いマルダーがもう60両あり、月10両のペースでウクライナに送ることができると説明した。
ドイツ政府はいま、使用可能なマルダー100両すべてを供与することを約束している。ラインメタルやドイツ軍、あるいはマルダーを運用する他の軍が、どれだけ早く追加分を確保できるかは不明だ。
ウクライナ軍の旅団が機械化大隊を完全に装備するには、少なくとも100両のIFVを必要とする。第82旅団は、まだ失っていない37両のマルダーを米国製のストライカー装輪式装甲車で補完している。第25旅団はマルダーと共に、BMP-2と、火砲をアップグレードしたBMP-1を使い続けるようだ。
(forbes.com 原文)