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2023.12.01 14:00

デジタル化とグリーン化を同時にかなえる。東京エレクトロンの経営者が語った「7つの攻め方」

具体的に、半導体に要求される技術は主に4つある。さらなる大容量化、高速化、高信頼性、そして低消費電力だ。

「これらを実現できる半導体の製造装置を開発すれば、お客様がハイエンドのデバイスをつくることができる。半導体製造装置を手がけるグローバル企業として業界をリードし、エネルギーが枯渇しない未来をつくりたい」

当然ながら、半導体製造装置は半導体の供給網を支える命綱のひとつだ。半導体の技術革新を推進しながらサステナビリティに貢献し、企業価値の持続的な向上を目指す。これが東京エレクトロンの共有価値の創造(CSV)だ。

具体的な目標は定まっている。30年までの中期環境目標ではウエハー(基板)1枚当たりの温室効果ガス排出量を30%、事業所からの排出量を70%削減すると掲げている(いずれも18年度比)。その通過点のひとつとして、23年6月には国内グループの全事業所で再生可能エネルギーの使用比率100%を達成した。

さらに、半導体メーカーがサプライチェーンに対してESG関連の要求を強めるなか、河合は21年にサプライチェーンイニシアティブ「E-COMPASS」を立ち上げた。半導体の高性能化と低消費電力化、装置のプロセス性能と環境性能の両立、事業活動全体におけるCO2排出量削減の3つを柱に約1000社の取引先やパートナー企業と連携し、業界全体で半導体の技術革新と環境負荷低減を目指す。

「唯一無二の上場企業になる」

今でこそ半導体製造装置のリーディングカンパニーとなった同社だが、始まりは技術専門商社だった。

創業は1963年。東京放送(現・TBSホールディングス)の出資を受けて東京・赤坂に東京エレクトロン研究所(現・東京エレクトロン)を設立した。当初はICテスターなどの輸入やビデオテープ・レコーダーなどの輸出を手がけていた。

68年にはTBS会館内に日本初となる半導体製造装置メーカーを設立し、拡散炉の国内生産を始めた。71年のニクソン・ショック(ドル・ショック)と73年の第1次オイルショックを機に、3年がかりで半導体製造装置やコンピュータ関連機器、電子部品に特化した事業体へと転換。テレビやオフィス用コンピュータなどの普及に伴い半導体の需要は右肩上がりで伸びていった。

86年からは製品の海外輸出をスタートした。河合が入社したのはまさにこの年だ。きっかけは、東京エレクトロンに勤めていた姉からの勧めだった。

「大学時代はゴルフ部の副主将をしていて、部活のチームワークを重視するあまりほとんど就職活動をしていなかった。そんなとき、姉から『いい会社だよ』と聞いて入社試験を受けた」

「体力があって元気な学生が欲しい」という企業側のニーズにピタリとはまり、晴れて採用通知を受け取った。初任地は大阪支社。文系出身で半導体のことなど何も知らなかった河合は、チームメンバーに教えを請いながら仕事を覚えていった。90年代には海外進出の動きが本格化し、東京エレクトロンは世界各国に現地法人を設立していった。そして2001年、河合に転機が訪れる。イギリスへの転勤を言い渡されたのだ。
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文=瀬戸久美子 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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