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2023.12.01 14:00

デジタル化とグリーン化を同時にかなえる。東京エレクトロンの経営者が語った「7つの攻め方」

では、どうすれば社員のやる気が高まるのか。河合が挙げるポイントは5つ。自分の会社や仕事が産業や社会の発展に貢献しているという実感。会社の将来に対する夢と期待。チャレンジできる機会。成果に対する公正な評価とグローバルで競争力のある報酬。そして風通しのいい職場。これらの方針をまとめて河合は「やる気重視経営」と表現する。

「能力を信頼して採用しているのだから、重視すべきは社員の『やる気』だ」

未来の人材育成や発掘にも力を注ぐ。そのひとつが、半導体業界で活躍する女性を増やす取り組みだ。

23年5月には、未来の半導体の技術革新を支える学生や研究者などの育成や活躍を支援するとともに、女性研究者や学生に機会を提供する「半導体の人材育成と研究開発に関する未来に向けた日米大学間パートナーシップ」(UPWARDS)への参画を表明した。日米の11大学が集まり、最先端の半導体カリキュラムを策定。産学連携を通じて次代を担う人たちを支援していく。

「経済安全保障の議論などでも半導体が話題にのぼるのは、それだけ経済的なインパクトが大きいから。半導体市場は間違いなく拡大していく。だからこそ、東京エレクトロンのような業界のリーディング・カンパニーが女性研究者や学生を支援し、活躍できるように導いていく必要がある」

攻めの姿勢はガバナンスにも貫かれている。河合が掲げるのは「攻めと攻めのガバナンス」。通常は「守り」とされる安全、法令巡視、セキュリティなどサステナビリティに関する取り組みを強化し、むしろ自社の強みにする。攻めのガバナンスによって組織を一層強くし、取引先や社会に選ばれる企業になることで業績向上にもつながる。河合があえて「攻め」という言葉を使うゆえんだ。

「ビッグデータ時代といわれていますが、実はまだスモールデータ時代だと私はとらえています。デジタル化と脱炭素に不可欠な半導体の活動を通じて、世の中の発展に貢献しながら利益と企業価値を向上させる。その原動力となる社員はもとより、会社を取り巻くステークホルダーがハッピーであること。これが、私が考える『いい会社』の定義です」


東京エレクトロン◎半導体製造装置メーカー。1963年11月11日に創業し、23年で60周年を迎える。創業時は技術専門商社だったが、68年に半導体製造装置専業メーカーとして拡散炉の国内生産を開始。

河合利樹◎1963年生まれ。明治大学経営学部を卒業後、86年に東京エレクトロンに入社。営業部門に携わり、6年間の海外勤務も経験した。2010年に執行役員、15年副社長。16年より現職。23年5月から一般社団法人日本半導体製造装置協会会長も務める。

文=瀬戸久美子 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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