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2023.12.01 14:00

デジタル化とグリーン化を同時にかなえる。東京エレクトロンの経営者が語った「7つの攻め方」

「日本でシェア50%以上の東京エレクトロンのプレゼンスと、ヨーロッパにおけるプレゼンスがまったく違う。お客様との信頼関係を構築しながら、同時並行でヨーロッパ全域の開発から製造、納入までひとりで見ることなどできない。そこで日本から製品を出してもらったり、エンジニアに来てもらったりするなかで、チームワークを通じてお客様に満足してもらうことの喜びを知った」

イギリス、ドイツとわたり歩き07年に帰国。10年には執行役員になる。そしてふたつ目の転機が訪れる。同業で世界首位の半導体製造装置メーカー、アプライドマテリアルズとの統合計画だ。13年に統合契約を結んだものの、米国司法省との見解の隔たりから15年に統合契約の解消を余儀なくされた。誰もが予期しない、想定外の結末だった。

徒労に終わった。そうとらえる人もいるかもしれない。だが、河合は違った。「世界ナンバーワン企業から利益へのこだわりを学ぶと同時に、東京エレクトロンに対するお客様からの絶対的な信頼や技術力の高さなど、自社の強みを再認識することができた」

成長戦略の練り直しを迫られることになった東京エレクトロンは、グローバル水準の収益力を目指した中期経営計画と財務モデルを策定し、新たな一歩を踏み出す。翌16年、河合が社長に就任。半導体市場の盛り上がりとともに同社の成長は一気に加速した。

その勢いは株価にも表れている。河合が社長に就任した年の東京エレクトロンの始値は2413円(16年1月4日時点)。23年10月1日現在の株価は2万440円で、時価総額は9兆4600万円に達する。目を見張るほどの成長カーブだ。

19年に発表した中期経営計画を2年前倒しで達成した河合は、22年に新たな中計を示した。そこには、27年3月期までに売上高3兆円以上、営業利益率35%以上、ROE30%以上という強気の財務目標が掲げられている。

「売上高が3兆円規模で営業利益率35%以上の企業は、東証プライム市場上場企業にひとつもない。唯一無二のパフォーマンスを出すことで、社員は会社の将来に夢と期待を抱くことができる」

人材育成もガバナンスも「攻める」

自社の強みを伸ばし、社会によりよく生かすために、河合は研究開発(R&D)と人への投資を強力に推し進めている。

過去5年間でR&Dに約6000億円を投じた。しかし、河合にとってこれは序の口。22年度からの5年間では研究開発投資に1兆円以上、設備投資に4000億円以上を投入する予定だという。

「最先端を追求していれば失敗は必ずあるし、失敗は将来に向けた学びのプロセスだ。社員がチャレンジできる機会があることは企業の成長につながる」

イノベーションを支えるのは社員、すなわち人だ。インタビュー中、河合の口からは何度も「企業の成長は人。社員は価値創出の源泉」という言葉が出てきた。社員がそれぞれの能力を最大限に発揮できるようにするためには、やる気を重視した経営を行うことが欠かせないというのが河合の考えだ。
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文=瀬戸久美子 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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