キャリア・教育

2023.12.14 09:00

キッチンから、仲間と。日本を世界で輝かせるブランドづくり

中道大輔(写真右)とForbes Japan編集長 藤吉雅春(同左)

中道:ブランドの軸や歴史は絶対に変えられないけど、今の人たちに伝わる形にすることは大事です。ただ、例えば日本の文化を海外の人に寄せてわかりやすくするというのは違う。変えないものと変えるものを正しくミックスして伝えることが大事です。
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着物の帯ひとつとっても、例えば江戸時代に縦縞は反逆精神を表していたとか、柄に文化や時代背景が紐づいているわけです。でも、そういう話をみんな忘れてしまっている。そういうことを僕はもったいないと思っています。衣食住に関する昔の習慣が、普通に町の中に違和感なく存在している。そういう文化って日本特有の強さだと思うんです。中世のコルセットを違和感なく町中で着ているなんてことは絶対にありえませんから。

藤吉:そう考えていくと、ブランドをつくることができる国というのは、歴史があり、成熟した文化を持っていて、それがストーリーとして物に表現されているのかもしれません。例えばリーバイスがカッコいいと思うのは、単にその形だけではない。

中道:本質がカッコいいんです。
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藤吉:その本質がどうやってカッコいいと思わせるのか、興味があります。

中道:藤吉さんがおっしゃったように、歴史や文化で積み上げてきたものがベースとしてあるからじゃないでしょうか。

藤吉:スピリットもブランドストーリーに関係ありますよね。安っぽいというイメージだった日本車が、歴史ある外国車を追い越して世界のトップに躍り出たのは、70年代の排ガス規制がきっかけでした。

アメリカの自動車業界が規制を逃れるためにロビー活動をしたのに対して、ホンダやトヨタは技術力で排ガス規制をクリアするエンジンを開発しました。技術で生まれた課題は技術で解決するのだというスピリットが、日本車というブランドをつくるストーリーになったわけです。

中道:自分たちがなぜそういうことをするのか、という要素はブランドを差別化するうえで重要です。ただ、そういう見えない価値は、伝わって初めて価値になる。伝えないと何の意味もないんですよね。

藤吉:気づくという意味では、今までそこに関われなかった人たちを関わらせることで発見が生まれることもありますよね。多様性は、気づかないところに気づかせてくれるという意味でも重要かもしれません。ところで、Kitchen&Companyという社名はどういう意味ですか?
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中道:キッチンって、料理をつくって皿に盛りつけてと、すごくクリエイティブな場所ですよね。それにキッチンはみんなが集まってきて、何か食べながら話をする楽しい場所でもあります。僕らはキッチンのシェフのような役割をしたい。Companyは「会社」という意味ですけど、「仲間」という意味もある。

藤吉:「台所仲間」ですね!

中道:僕ひとりでは絶対にできませんからね。会社の仲間はもちろん、クライアントさんも、今まで一緒にいろいろなことをやってきた人たちも、みんなと仲間になって一つのうまい飯を作ろうというところからスタートしました。

藤吉:なるほど。キッチンで食べながら、というのは、世界共通のコミュニケーションですよね。今日は中道さんに「何をやっているんですか」という話を聞きながら、ブランドとは何か、文化とは何かということを探ってみました。ありがとうございました。

中道:こちらこそ、どうもありがとうございました。

文=久野照美 編集=鈴木奈央

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