「責任感」には限界がある 今、浪江町が若者を呼び込むワケ

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日本の企業が世界に出るとき足りないものは何か? そのひとつがコミュニケーション、つまり伝える内容や伝え方だとしたら、どうすれば乗り越えていけるのか?


未開拓の日本の可能性を世界と繋ぐことをミッションとするKitchen & Companyの代表・中道大輔がナビゲートするPodcast「VISION TO THE FUTURE」とForbes JAPANがコラボレート。国内外で活躍する“視点”のあるゲストとともに、考え、発信していく。

Vol.60配信は、前回に引き続きNoMAラボ代表理事の高橋大就。食を中心に東北の復興に取り組んできたが、2020年に福島県浪江町に移住。NoMAラボを立ち上げ、移住者を募り、地域住民とともに自分たちの手で町やコミュニティをつくる新プロジェクト「驫(ノーマ)の谷」に取り組んでいる。

中道:前回に引き続き、一般社団法人NoMAラボ代表理事の高橋大就さんをお迎えしています。

外務省で日本の安全保障に取り組まれていた高橋さんは、地方や地方産業の疲弊に危機感を持たれ、「一次産業×世界」で地方の経済をつくろうとされていました。その矢先に東日本大震災が起こり、そこから東北にフォーカス。生産者のヒーローとヒット商品をつくるというポジティブな戦い方で東北に活力を生もうとしています。

その最初の商品として生まれたサバの缶詰「サヴァ缶」は1000万個以上を売り上げ、サバ缶全体の価値を上げました。現在はアカモクなどの、まだ認知度の低い食材のマーケティングにも取り組んでいます。

日本の食材に付加価値をつけて需要を作ってこられた高橋さんは、日本の食材にどのような可能性を感じていますか。

高橋:マクロ的に見ると、可能性しかありません。2050年に世界の人口が100億人近くなると言われています。爆発的な人口増の中で食糧の量と需給のバランスが問題視されていますが、私はそれ以上に質の需給バランスが問題だと思っています。アジアで中間層や富裕層が爆発的に伸びてくると、食の質、安全性や美味しさなどのクオリティフードの需給バランスが重要になるでしょう。

それを提供できるのは、絶対に日本だと思うんです。食材の質に対するスキルを持っているのは、どう考えたって日本ですから。まず、物として世界に出していき、さらに技術として出していく。そういう圧倒的なポテンシャルが日本にはあります。

また、東北で生産者の方々と話をしていると、農業も漁業も価値というものは人についてくるのだなと思います。誰がどういう思いでそれを作っているのかというところが付加価値の源泉で、「この人が作ったものを食べたい」という価値が新たに生まれています。
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文=久野照美 編集=鈴木奈央

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