医大の増員に現役医師たちが反発
韓国は出生率0.78という少子化の国である。年々受験生の数も減ってきている。そんななかもう1つの問題が起きている。それは、理系の受験生たちのほとんどが医学部を目指しているということだ。憧れのソウル大学に入学した学生たちが一番受講したがる教養科目は「数学」だそうだ。それだけ数学に興味があると思いきやそうではない。ソウル大学の医科大学(医学部)を目指している仮面浪人が多いからだという。数学を受講するのは、大学の単位を取りながら、密かにスヌンの数学も勉強できるので一石二鳥だからだ。
このように医学部への進学を強く望む受験生が増えてきているのは、やはり生涯年収の差に起因している。「高所得者」と言われる医師の所得が、最近さらに増加傾向にあるのだ。
10月29日の国税庁の発表によれば、医療業(開業医、漢方医、歯科医)の平均所得は、2021年基準で2億6900万ウォンであった(約3000万円)。統計が集計されはじめた2014年の1億7300万ウォンに比べると7年間で9600万ウォンが増加したことになる。
これは、高所得者イメージの高い専門職である弁護士の平均所得に比べても遥かに高く、増加幅も大きい。弁護士業の平均所得は、2014年~2021年は1億200万ウォンから1億1500万ウォンと1300万ウォン増加している。
もっとわかりやすく言うと、韓国の医大生が研修医の時は税抜き5760万ウォン、専門医になると1億8000万ウォンを受け取る。反面、大企業の大卒の初任給は約4200万ウォンから約6000万ウォンだ。中小企業の場合は、大卒の初任給は約3000万ウォンとなっている。また、サラリーマンはリストラという不安もあるが、医者だとよっぽどの事情がない限り60歳までは安泰である。
しかも弁護士の所得は年々下降気味だと言われている。韓国では最難関資格試験と言われた司法試験が廃止され、法学専門大学院(ロースクール)を経ての比較的簡単な弁護士資格試験に変わり、弁護士の数が急増しているからだ。これに比べ、医学部の定員は凍結され、医師の数は増加しにくくなっている。
実際、医療業の事業所得申告者数は、6万7867人から7万6673人と13パーセント(8806人)増えたが、同期間の弁護士業の所得申告者数は、4419人から42.4パーセント(1873人)も増加した。
巷では医療行為がなかなか受けられないなど医師数不足が叫ばれるなか、韓国政府の福祉部では、10月27日から9日間「2025年から2030年まで6年間に希望する医学大学定員の需要調査」を全国の医科大学で行った。
結果、2025学年度入試で大学側が必要としている増員幅は、2151人~2847人、2030学年度に関しては2738人~3953人であった。なんと、最大約4000人の増員を望んでいるというのだ。