「データを音声として聞く」研究が、新たな可能性を開く

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グラフはデータを視覚イメージに変換することで、情報を見やすく、理解しやすくする。だが、データを共有する別のやり方として、たとえば数値を音に変換する方法がある。これは、データ内の新しいパターンを見つけるためや、データを利用しやすくするため、あるいは単により興味を引くために役立つ。最近ある研究チームが、ボランティアの被験者に気象データを音声として聞かせる実験を行い、データを音に変換する表現方法の違いによって、人の聴覚体験がどのように変わるかを調べた。

データの可聴化(データ・ソニフィケーション)は、データを音声パターンに変換するプロセスだ。その方法には、ビープ音とクリック音の連続といった単純なものから、フルオーケストラの交響曲という複雑なものまでいくつかある。しかし、どんなタイプの音声が、聞く人を最も引き付けるのだろうか? それを知るために、フィンランドと米国の研究者たちは、さまざまな種類のデータ可聴化に対して、人がどのような反応を示すかを調べた。

どんなデータでも可聴化できるが、この研究では、フィンランドの気象記録が用いられた。データは、3つのセットの音声に変換された。1つはメロディーとして、2つめは和音として、そして3つめはリズムとしてデータを表現したものだ。それぞれのセットの中で、可聴化されたデータは、単純な音声、音色を加えた音声、および音色とリズムを加えたより複雑な音声として提供された。こうして被験者は合計9種類の音声を聞くことが可能になった。

ボランティアの被験者は、これらの音声のいくつかをランダムな順番に聞かされ、それぞれについて「聞き取り作業に没頭した」「音声の内容が好奇心を掻き立てた」などの項目に評価を求められた。

すべてのデータを分析した結果、それぞれの音に対する人々の感じ方に、僅かな違いがいくつかあることを研究チームは発見した。たとえば、データがリズムとして提示された時、被験者は、単純な音声として聞いた時の方が、複雑な音声を聞いた時よりも集中した。しかし、メロディーに変換されたデータを聞いていた時は、複雑な音調を含んだ音のほうが心地よく感じた。
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翻訳=高橋信夫

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