家畜の「あの香り」を1日で処理する発酵脱臭技術

プレスリリースより

緑豊かな山村のキャンプ場などでは、風向きによって、かぐわしい堆肥の香りに包まれて家に逃げ帰りたくなることがある。日本の食料自給を支える大切な仕事なので文句は言えないが、やっぱり臭いものは臭い。そこで登場したのが急速発酵乾燥資源化装置(ERS)だ。これがすべてを丸く収めるばかりか、農村地帯の発展をももたらしてくれる。

畜産が盛んな地域では、家畜の排泄物を堆肥にして再利用する際に、発酵が不十分なまま畑に散布することで悪臭が広範囲に発生することが多い。それは地元住民の生活環境を悪化させるばかりか、観光にも影響する。あの匂いのおかげで土地の価値が上がらず、観光産業の投資も遠ざけているという。だが、きちんと発酵させれば糞尿も無臭の上質な堆肥になり、環境が改善され農家の生産性も上がってみんなハッピーになれる。それを実現するのがERSだ。

ERSの開発製造を行うJETは、山口県の乳牛牧場「べるちゃんたちのおうち」と、北海道の畜産企業トップファームにてERSの実証実験を行い、糞尿の処理、液肥や敷料としての利用、土壌の脱臭効果の持続性を確認できたことから、土地改良を目的とした自治体向けの営業を開始した。

ERSは、微生物を使って糞尿などを分解する。乾燥工程がないため燃料代の節約にもなり、なんとわずか1日で処理ができてしまう。微生物の発酵熱分解により汚水の排水もなく、発酵期間が短いので温室効果ガスの発生も少ない。成果物として、無臭で上質な液肥と堆肥、さらには牛舎の床に撒く敷料ができる。JETでは、移動式のERSの提供も計画していて、ため池の汚泥、ゴミの埋め立て地などの処理も現場で行えるようにするとのことだ。

トップファームは「牛舎での悪臭は当たり前でしたが、牛もくつろぐことができ、訪れる方々は驚きの声をあげます」とERSを称賛している。畜産業から匂いが消えれば、働きたいという若い人たちも増えそうだ。なにより、キャンプ場で心おきなく爽やかな自然の空気を楽しめるようになれば、ありがたい。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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