学術誌Nature Communicationsに7日付で掲載された、今回の研究をまとめた論文によると、金星の昼側では、二酸化炭素や一酸化炭素が太陽光にさらされて分解し、酸素が生成されることが明らかになった。この酸素は、金星の大気循環パターンによって夜側にも運ばれている。
今回の発見は、金星と地球の大気がこれほど異なっている理由を科学者らが解明する助けになるとともに、金星への将来の宇宙探査計画を後押しするに違いないと、研究チームは述べている。現在、3つの金星探査計画(後述)が浮上している。
原子状酸素は、金星大気中の高度約97kmで見つかった。観測は2021年11月、NASAの遠赤外線天文学成層圏天文台(SOFIA)を用いて実施された。ボーイング747型航空機に口径2.5mの天体望遠鏡を搭載したSOFIAは、2022年9月に運用を終了している。
有毒な大気
金星は岩石質であり、地球と同じくらいの大きさで、太陽からの距離と炭素の存在量も地球とほぼ等しい。だが、現在の金星は厚い硫酸の雲に覆われ、地球大気の50~90倍も濃い大気を持っていることが、1960年代以降に惑星科学者らによって明らかにされた。金星大気の主成分は二酸化炭素と窒素だ。雲の温度は約30度である一方、金星の表面は約480度と、鉛が溶けるほどの高温に達する可能性がある。
暴走温室効果によって水がすべて蒸発してしまうまで、金星は生命生存可能だった可能性があるのではないかと、科学者らは考えてきたが、米シカゴ大学から今年発表された論文は、その説に疑問を投げかけている。論文のコンピュータシミュレーションでは、金星がどのようにして現在の大気を持つに至ったかの説明を試みた。その結果、生命が定着できるほど長期間にわたり、金星が水と温暖な気温を保持するための方法はほとんどないことが明らかになった。