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2023.11.09 10:00

ネット上の「忘れられる権利」と表現の自由のバランスとは

忘れられる権利の適用

この権利は、個人が、自身の個人データの削除を求め、それが特定の基準を満たした場合にのみ適用されます。正当な理由なくデータの削除を要求することはできません。

EUにおける、忘れられる権利の基準には以下の内容が含まれます。

・データを、収集または処理された当時の特定の目的のために使用する必要がなくなった場合
・個人が、データ使用に対する同意を撤回し、それに反する正当な根拠がない場合
・個人データが、ダイレクトマーケティング目的で処理され、個人がこれに異議を唱えた場合

ただし、個人データの削除要求が拒否されるケースもあります。

・データが、表現の自由と情報の自由を行使するために使用されている場合
・データが、公共の利益に貢献している場合、または、組織の公式な権限を行使するために使用されている場合
・処理されるデータが、公衆衛生の目的で必要があり公共の利益に資する場合

その他の例は、EUが詳細を開示している通りであり、ヨーロッパでデータが削除される場合とされない場合の理由が示されています。本規則はEU域外では異なる場合があります。

忘れられる権利の事例

データの削除には、複雑な課題が残されています。例えば、検索エンジンが個人のデータを削除するように命じられた場合、現状、EU域内で表示される検索結果にのみ適用され、EUのエリアを越えて世界で表示される結果には反映されません。

それでも、この権利の認知度が高まるにつれ削除要求は増加しています。例えば、エックス(旧ツイッター)は、同社が情報を提供している最新の期間である2021年下半期には、1日平均250以上の削除要請を受けています
エックス(旧ツイッター)では、ツイートの削除要請が増加しています。 Image: X

エックス(旧ツイッター)では、ツイートの削除要請が増加しています。 Image: X


インターネット上で忘れられる権利が適用された事例は以下の通り。

中傷的なソーシャルメディアの投稿

過去の犯罪歴に関する情報

新聞報道による告発が後に事実に反すると証明された

公開された個人の画像に対し侮辱的なコメントが寄せられた

許可なく個人の画像や動画が悪意ある目的で使用された

忘れられるべきことと、そうでないことの判別

一部の批評家は政策立案者やリーダーに対し、忘れられるべきことと、そうでないことを決定する際にはバランスの取れた判断が必要であると指摘しています。

例えば、忘れられる権利と表現の自由が対立関係に置かれる場合があるため、GDPR 第17条3項では、忘れられる権利の例外規定が定められており、その中には、表現の自由や情報の自由を行使する場合が含まれています。この権利は、人権侵害や違法な活動を隠蔽するために悪用される可能性があるとの見方もあります。
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文=Ian Shine, Senior Writer, Forum Agenda

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