映画

2023.11.04 12:00

舞台は戦後へと遡る。国内30作目の最高傑作「ゴジラ-1.0」


戦争が終わり、生き残った敷島は、収まりのつかない悔恨を抱えたまま焦土と化した東京へと戻ってくる。不思議な縁で知り合った大石典子(浜辺美波)と焼け跡に建てられた質素な家で暮らすようになるが、その東京に南の島で目撃したゴジラが現れる。

日本に戻ってきた敷島浩一(神木隆之介)は、焼け跡で大石典子(浜辺美波)と知り合う ©2023 TOHO CO., LTD.

ゴジラは東京湾から銀座へと上陸し、和光のビルや日劇の建物を破壊しながら、街を蹂躙していく。このあたりのシーンは1954年の「ゴジラ」を踏襲していると思われるが、やはり特撮の場面は、新たな映像技術を駆使しはるかに迫力に満ちている。第1作と比べながら観るのも、さらに興味が深まるかもしれない。

復員してからは戦闘機でのキャリアを活かして戦後処理の特殊任務に就いていた敷島だったが、そこで優秀な開発者でもある野田健治(吉岡秀隆)と知り合う。そして、敷島は南の島での出来事を心に浮かべながら、野田を中心に組織された民間のゴジラ掃討チームに加わることになる。

怪獣映画の最大の見どころは、立ちはだかる強大な敵に対して、人間たちがどう挑んでいくかだ。この「ゴジラ-1.0」では、なるほどと驚く撃退法が用意されている。戦争が終わり、軍隊も武器も失った日本人たちが、米軍の力も借りられず、民間の力だけでどのようにしてゴジラの脅威を取り除いていくのかが、この作品の見どころの1つでもあり、なかなか意味深い設定でもあるのだ。

ゴジラの姿を目の当たりにする典子 ©2023 TOHO CO., LTD.

「-1.0」に込められた意味とは?

「ゴジラ-1.0」の特筆すべきところは、確かに怪獣が登場するパニック作品でもあるのだが、戦争で何もかも失い、それでも明日に向かって生きていこうとする市井の人々の暮らしも丁寧に描かれていることだ。このあたりは映画「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ(2005年〜2012年)などを手がけてきた監督・脚本の山崎貴の面目躍如たるものがある。

特殊撮影にもかなりの迫力が ©2023 TOHO CO., LTD.

また山崎監督は、自身の監督作品でもある「永遠の0」(2013年)の反歌としてこの「ゴジラ-1.0」を位置づけているフシもある。冒頭の南の島に機体の不調で着陸する主人公の設定や、ネタバレとなるので詳しくは書かないがラストシーンなどは、あきらかに「永遠の0」を意識して描かれたもののように思える。
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文=稲垣伸寿

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