欧州

2023.10.21

ロシア兵のお手製迫撃砲、運悪ければ自分が吹き飛ばされる危険

第2次世界大戦中にソ連軍が使用した携行型迫撃砲(Shutterstock.com)

ウクライナにいる一部のロシア軍部隊は、迫撃砲を自作しているようだ。これは非常に筋の悪い思いつきだったと言わざるを得ない。

19日にソーシャルメディアで広がった動画には、ロシア兵のペアが、一見すると普通の歩兵用迫撃砲の口から82mm弾を落とし込み、発射している様子が映っている。

だがよく見てほしい。砲身は取っ手の付いた簡素な金属パイプだ。それが支持架に蝶番で粗雑に溶接されている。おそらく、砲身の底に撃針があるのだろう。


ロシア兵たちはどうしてまた自分で迫撃砲を作ろうなどと考えたのだろうか。事情はよくわからないが、新式の戦車や戦闘車両と同様に、専用の迫撃砲も不足しているのかもしれない。

いずれにせよ、迫撃砲をDIYで作るのはやめておいたほうがいい。理由は明らかだ。お手製の迫撃砲は精度がとんでもなく低いばかりか、使う側にとってきわめて危険だからだ。砲身に欠陥があれば中で砲弾が爆発し、砲手にとって破滅的な結果になりかねない。

映像のロシア兵らは、通常の2B14「ポドノス」82mm迫撃砲も使えはするものの、「コマンド迫撃砲」と呼ばれるもっと携行しやすいタイプが欲しかったのかもしれない。

大半の歩兵用迫撃砲は運搬や組み立て、操作のために少なくとも2人を要し、2B14の場合は通常4人だ。これに対して、コマンド迫撃砲は1人で運用できるサイズになっている。第2次世界大戦中、ソ連軍は37mmコマンド迫撃砲を兵士に支給し、今日、多くの軍隊は51mmか60mmのコマンド迫撃砲を採用している。

だがロシア軍では違っていて、使っている最小の迫撃砲でも口径は82mmある。これはロシア軍の伝統を反映したものかもしれない。多くの軍隊で最も小型の歩兵用迫撃砲を運用するのは実際に歩兵であるのに対して、ロシア軍の場合、迫撃砲を運用する兵士はすべて砲兵部隊に所属している。

ではロシア軍では迫撃砲は小部隊を直接支援しないのかというと、そんなことはない。ロシア軍の82mm迫撃砲は実際に支援射撃に使われ、一般的には歩兵による突撃の終盤で用いられる。「最後の前進は歩兵用迫撃砲で掩護され、続いて手榴弾を使用し、目標の陣地に突入する」と、英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のジャック・ワトリングとニック・レイノルズは5月の報告書で解説している。

混沌とした状況の中で極度の緊張を強いられる接近戦で、持ち運びしやすいコンパクトな迫撃砲が役に立つだろうことは容易に想像できる。兵士はひざまずき、砲身を地面に突き立て、角度を見定め、数発の弾を発射するまでを1人でできる。

こうした間接射撃を取り入れている軍隊は、清潔で、まっすぐで、酷使に耐える砲身を周到に用意している。

だが、建設資材を流用して即席でコマンド迫撃砲をこしらえた場合、不潔で、ゆがみ、壊れやすい砲身ができ上がる可能性が高い。一度でも不具合が起これば、不運な砲手は迫撃砲もろとも吹き飛ばされてしまうだろう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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