そこで参考になるのが、生前にカーティスが実施した最新研究だ。カーティスをはじめとした研究チームはまず、電子カルテにプログラムを施し、重篤な疾患をもつ患者を特定できるようにした。
次に、ケアのゴールに関する話し合い方を示したコミュニケーションガイドをコンピュータに事前入力しておき、重篤な患者の担当医に、それがメールで自動送信されるよう段取りを整えた。つまり、医師が自主的に介入を活用するのを待たず、自動的に介入が行われるようにしたのだ。
医師が「この患者は重篤だから、カリウム値の再検査と新しい抗生剤の発注が必要だ。そうだ、そういえばケアのゴールについても話し合いを始めなければ」と考えるのを待つのではなく、医師に対して「この患者とはケアのゴールについて話し合うことが重要だ」と注意喚起が行われるとともに、先述したガイドの存在を知らせ、難しい話し合いでもうまくリードできると思ってもらえるようにしたのだ。
この単純な介入が功を奏した。介入しなかった場合、重篤な患者の担当医が、ケアのゴールについて話し合ったことを電子カルテに記述した割合は30%だった。一方、電子カルテを通じてガイドを受け取った医師が「ケアのゴールについて話し合った」と記録した割合は34.5%だった。
その差はたった4.5%ではないかと思う人もいるかもしれない。しかし、こう考えることもできる。電子カルテを通じてガイドを送るという、単純で控えめな介入に反応した結果として、重篤な患者とケアのゴールについて話し合い、それをカルテに記録した医師は25人中1人いたと。介入がなければ、そうはならなかったはずだ。
深刻な病を抱える患者は、本人が望むケアを受けられて然るべきだ。ランディ・カーティスは、自分の人生における最後の数カ月間で、この重要な介入を自動化するための重要なステップを構築したのだ。
(forbes.com 原文)