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2023.10.20 18:15

カルチャープレナーの発信地・京都 門川市長が語る「1000年物語」のこれから

門川が課題として挙げた、働く場の確保を後押しする施策も動き始めている。京都駅南に企業集積のシンボルゾーンを創出すべく始動した「京都サウスベクトル」だ。これは、都市計画の見直しによるオフィスビルやラボ施設の高さ、容積率などの規制の大胆な緩和に合わせ、補助金制度を大幅に強化し、京都でのビジネス展開を強力に支援するもので、オフィスやラボの誘致が加速している。

1000年都市から出よ、若きカルチャープレナーたち

京都市の成長戦略には「スタートアップやソーシャルビジネスが集積し、イノベーションが生まれるエコシステムの構築」が盛り込まれ、社会課題の解決や新産業を創出する担い手に選ばれる都市を目指す。

門川は、京都経済の活性化において「スタートアップの集積が必須」だと考えている。2020年には京阪神として国の「スタートアップ・エコシステムグローバル拠点都市」に選定され、産学公と金融機関が一体となって、2年半でものづくりやバイオ・ヘルスケア・ライフサイエンス、ITなど、113社もの多彩なスタートアップがここ京都で生まれている。

スタートアップ・エコシステムの充実により、日本中、世界中からヒトや企業、投資がより集まる好循環を生みだし、持続的な都市の成長につながっていくだろう。
 
京都ならではのカルチャーを基盤に、起業家のアニマルスピリットが育まれる。門川が思い描くのは「文化と経済の好循環を創出する都市」だ。そこで、彼はカルチャープレナーに期待する。文化を新たな視点でビジネスに再構築し、価値を創出する「文化起業家」だ。温故知新の起業スタイルは、京都という地にふさわしい。
 
京都市は2022年から「京都アート・エコシステム実現プロジェクト」を実施している。これはアートの社会的・経済的価値を高め、門川が言う「文化と経済の好循環を創出する都市」を目指すものだ。国内外から投資や経済的な支援を呼び込むスキームを作り、文化や芸術の担い手が創作活動に没頭できる環境を整備している。
 
「文化と経済の融合とは京都のまちそのもの、と言ってもいいでしょう。スティーブ・ジョブズが京都を度々訪れたことが知られていますし、Googleマップを使ったIngressやポケモン GOなどを手がけたジョン・ハンケも京都の禅にインスピレーションを受けたと言われます。名だたるスタートアップのファウンダーたちは京都を訪れ、寺社や伝統文化、自然、そして市民の暮らしの美学に触れ、着想を得ました。

文化庁が京都市に移転し、京都市立芸術大学のキャンパスも西京区から京都駅東隣・崇仁地域に4万平方メートルの敷地を確保し、移転するなど、文化を基軸としたまちづくりは着々と進みつつあります」
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文=佐々木正孝 写真=コイケ マコト

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