この環境から飛翔が期待されるのがカルチャープレナーだ。若き起業家たちは文化を持続的なビジネスとして捉え、文化資産や地域資源、テクノロジーと融合させて起業を目指す。伝統をアップグレードしながら、新たな価値観を指し示す。京都市はForbes JAPANと連携して「カルチャープレナー」の発信に取り組んでおり、10月24日にみやこめっせでカルチャープレナーアワードの授賞式が開催される。
「京都には老舗商法という言葉がありますが、『ほんまもん』を追求していれば、分かる人には分かってもらえる。それが大切と、昔から宣伝、プロモーションに力を注いでこなかった歴史があります。今後はメディアの力を借りながら、カルチャープレナーの新たな評価軸や社会的インパクトを可視化していく。京都から世界に文化の起業が発信されることには大きな意義があります」と、門川も大きな期待を寄せる。
「時間と空間が交差する十字路」 新たな成長戦略とは
「京都市立芸術大学の移転にはテラスというキーワードがあります。これは芸術の殿堂で創造活動や研究に打ち込みながら、地域に開かれた学びの場であること。日本古来の『縁側』と言い換えればイメージしやすいでしょう。そしてもう一つのキータームが十字路です。京都駅から東山、そして西山を結び、文化交流やにぎわい創出が期待される文化軸と、鴨川や高瀬川といった悠久の自然・文化軸が交差し、交流が深まるエリアになるということです」もともと、1978年に京都市は世界文化自由都市宣言を提唱し、『優れた文化を創造し続ける永久に新しい文化都市』を世界に発信。人種や宗教、社会体制の壁を超えて、平和と自由のもとに集い、文化交流を行っていく。自ら変革していく京都の未来を見据え、門川はこう続ける。
「カルチャープレナーを後押しする取り組みも、時間軸と空間軸の十字路だ、と私は考えています。1000年の歴史の積み重ねに支えられ、この先の1000年を紡ぐ起業家、スタートアップが向き合う時間軸、そして、現代社会の解決すべきあらゆる課題を見据え、多くの施設や機関に国内外から集まってくる空間軸。文化芸術に投資し、活性化させていく新たな潮流が、次の1000年に向けて、ここ京都から生まれています」
悠久の文化を紡ぐ京都から現れ始めた、1000年の歴史に学び、1000年先を見据えたカルチャープレナーの行く先に注目したい。
門川大作◎京都市長。1950年京都府京都市生まれ。京都市立堀川高校を卒業後、1969年に京都市教育委員会に採用。1974年に立命館大学二部法学部を卒業。京都市教育委員会教育次長を歴任し、2001年より2007年まで教育長を務める。2008年に京都市長選挙に初当選し、現在4期目を務める。国の教育再生会議、中央教育審議会の委員を歴任。世界128の歴史都市が参画する世界歴史都市連盟の会長を務める。