ハマスの戦い方を巡っては様々な評価が出ている。最初に3千発余のロケット弾を発射した。元自衛隊幹部の1人は「イスラエルの(防空システム)アイアンドームを飽和攻撃で打ち破ろうとした」と語る。ハマスは最初に、ドローン(無人機)を使ってイスラエルの監視カメラなどを破壊し、戦闘員がガザ地区から分離壁を破壊してイスラエルに侵入した。ハマスを支援する側とみられるアカウントから、様々な偽情報も流れている。元幹部は「イスラエルの士気をくじいたり、意味のない場所を攻撃させたりする、認知領域の戦いを挑んだのかもしれない」と話す。
別の自衛隊元幹部は「ハマスによる攻撃で喜んでいるのはロシアと中国だろう」と語る。ロシアはウクライナ侵攻を巡って深刻な砲弾不足に陥っている。ウクライナ軍による反転攻勢にさらされ、西側諸国のウクライナ支援が先細るのを今か今かと待っている。米国は、ウクライナに対する最大支援国だが、「ウクライナとイスラエルのどちらを助けるのか」と問われれば、一も二もなくイスラエルを選ぶだろう。来年秋に大統領選を控えるバイデン米大統領にとって、ユダヤロビーの支持は絶対に欠かせない。
こうしてみると、ハマスの戦いにも意味や展望があるようにも思われる。だが、元外務省幹部の見方は全く違う。「それもこれも、ハマスがウクライナのように長期戦に持ち込むことができたら、という話だろう。多数の犠牲者が出たことは事実だが、イスラエルの国力は全く揺らいでいない。短い期間で戦いが終われば、ウクライナなど国際情勢にも大きな影響は出ないだろう」
ハマスはガザ地区にトンネルを縦横無尽に張り巡らせているという情報もある。ただ、電気や水などのインフラはすべてイスラエルに握られている。ガザ地区内に雪隠詰めになれば、いくらトンネルがあっても、最後には掃討される。同情する声は上がっても、ヒズボラなどを除いてハマスを支援する動きもほとんど見られない。元幹部は「秘密裏にできるならまだしも、世界に目撃されるような状況で支援する国など出てこない。イランだって国益をまず考える。ハマスへの軍事支援は到底考えられない」と指摘する。