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The Honest KitchenのCEOルーシー・ポスティンズ氏(Courtesy The Honest Kitchen)



アメリカ人はペットにかけるお金を惜しまない。The Honest Kitchenの快進撃がそのことを証明した。

ポスティンズ家のウィローとタローは毎日、The Honest Kitchen本社に出勤する。来客にちょっかいを出したり、廊下で喧嘩を始めたりする彼らは理想的な社員とは言いがたい。だが雇い主で育ての母でもあるルーシー・ポスティンズは目をつぶっている。

何しろ彼らはローデシアン・リッジバックというかつてはライオン狩りに使われていた犬種なのだ。社内では他にも10頭の犬が自由に歩き回っている。人間の従業員は23人。「犬好き」は同社の採用条件のひとつである。

The Honest Kitchenの使命は、最高級品質のペットフードを売ることだ。「ヒューマン・グレード」(人間向けの食品の安全基準を満たした)を謳う看板商品は、グラノーラを砕いたような見た目の低温乾燥フード。水を加えてかき混ぜ、数分待つと出来上がる。パッケージの原材料欄には放し飼いの鶏や鴨肉、サツマイモ、カボチャ、クランベリーなど、農家直送レストランを思わせる食材が並ぶ。

「人間の家族に出す食材と同じものを使っています」と40歳の同社CEOルーシー・ポスティンズは言う。「私にとってこれはグルメではなく当たり前の食事なのです」

ポスティンズが今から13年前に自宅のキッチンで創業したThe Honest Kitchenのターゲットは、平均的なペットオーナーではない。遺伝子組み換えではない作物やオーガニック食品を求めて自然食品店で買い物する層が対象だ。200億ドル(約2兆4180億円)といわれるペットフード市場において同社の年商は2100万ドル(約25億39000万円)。前年から50%近くの成長を見込んでいる。

高級志向の需要を取り込む戦略自体は、ペットフード業界において目新しいものではない。だがポスティンズは人間用の食品メーカーのやり方をモデルにしてきた。健康志向が売りのスタートアップ企業がクラフト・フーズやキャンベル・スープ・カンパニーといった大手に打撃を与えているかたわらで、一箱454gのドッグフードを120ドルで販売し、ペットフードの老舗メーカーに挑戦状を叩きつけた。


ポスティンズは起業するまで、このような市場が存在することすら知らなかった。英国生まれの彼女は1998年、日産のカーデザイナーだった夫のチャーリーに伴いカリフォルニア州サンディエゴに移住。プレミアムペットフードのメーカー、ソリッド・ゴールド社のマーケティング部門で働いていた頃、生食に関するネットの記事を読み、当時飼っていた犬の耳の感染症を緩和する助けになるかもしれないと考えた。犬に生の肉や野菜を与える生食は、犬の祖先が自然界で食べていたものが犬の体に最適であると考える近年人気の食事法で、獣医学の専門家の間で賛否両論がある。

一般家庭で生食を実践すると、手間がかかる。また食中毒の危険もある。そこでポスティンズは生の食材を低温で乾燥させるアイデアを思いついた。

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2002年、夫のチャーリーが7000ドル(約84万6300円)の融資を延長したのを機に、ポスティンズは勤務先を退職。工場と交渉を重ね、試行錯誤の末に加工方法を編み出すと、まず地元のドッグパークでサンプルを配布した。同年9月にウェブサイトを開設。すぐに東海岸に住む女性から注文が入り、ポスティンズは嬉しさのあまり38ドルの送料を負担して32ドルの商品を翌日着の便で送った。最初の2年間は自宅がオフィスとなった。

2007年、8人のスタッフを抱え、週に220件の注文が入るようになった頃、チャーリーが日産を退職し、本格的に経営に参加。業績は決して順調とはいえなかったが、ペットフード業界では稀有な「ヒューマン・グレード」を維持する信念を貫いた。

もっとも誰もが食材の産地や加工にこだわる同社の姿勢を賞賛しているわけではない。タフツ大学獣医学部の栄養学の教授であるリサ・フリーマン博士は、高級な食材がペットにとっていいとは限らないと語る。「最近のペット業界には様々な俗説が飛び交っています。原材料表示はマーケティングの一種に過ぎません。消費者の選択はマーケティングに影響されているのです」

事実、ポスティンズは年間120万ドル(約1億4508万円)をマーケティングに投入している。The Honest Kitchenの商品はオンラインショップと独立系のペット用品店にしか卸さないポリシーだ。大手ペット用品チェーンのペットコなどでは販売しない。

2011年、The Honest Kitchenはアライアンス・コンシューマー・グロースなどから500万ドル(約6億450万円)を調達した。今年は黒字復帰を願うポスティングだが、同社の「プロフィット(利益)よりペット」という精神は変わらないと主張する。彼女はつい最近も、儲けになりそうな日本の代理店との契約を見送った。その会社がパピーミル(劣悪な環境の犬のブリーディング施設)で生まれた子犬たちを売る、ペットショップと取引しているからというのが断りの理由だった。

文=ブライアン·ソロモン(Forbes)/ 翻訳編集=海田恭子

 

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