サイエンス

2023.10.16 13:00

南極で見つかった火山灰、過去5千年で最大級の噴火のものと特定

遠藤宗生
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ニュージーランドのタウポ湖とトンガリロ火山(Shutterstock.com)

ニュージーランド北島の中央にあるタウポ湖は、オセアニア最大の淡水湖だ。火山の噴火でマグマだまりが空洞化した後にできた大釜のような形状の陥没盆地に、水がたまって生まれたカルデラ湖である。

タウポの「スーパーボルケーノ(超巨大火山)」は、地質学的な時代区分で最近と呼べる時期に、世界史上最大級の噴火を2回起こした。約2万5500年前に発生したオルアヌイ超巨大噴火は、世界で最も新しい超巨大噴火と言われており、北島を火山灰と火成岩の厚い層で覆った。この火山は約2000年前に再び噴火し、それはニュージーランド史上最大の噴火として知られている。

この噴火の発生年代については論争があり、ヴィクトリア大学ウェリントンの博士課程に在籍するスティーブン・ピバによると、科学者たちは10年以上にわたって噴火の証拠を探していた。

「このときのタウポの噴火は、過去5000年間に起こったとされる中でも最大かつ最も強力な火山噴火の一つだった。壊滅的な被害は約2万km離れた場所にまで及び、一帯に火山性降下物が拡散した」とピバは語っている。

「しかし、噴火がいつ発生したのか、正確な時期をめぐっては議論が生じている。今回、地球化学の見地から独特な火山ガラスの破片が氷床コアの奥深くに埋まっているのを発見したことで、噴火の時期が西暦232年の晩夏から初秋にかけてだった可能性が高いと確認できた」

火山灰は岩石の破片と急速に固まった溶岩からなり、気泡の多い非結晶質の物質を形成する。顕微鏡を通すと、この物質は割れたガラスの破片のように見える。

タウポ噴火の火山ガラス片は、ルーズベルト島気候進化(RICE)プロジェクトで西南極から採取された氷床コアの深さ279m付近で見つかった。

その地球化学的組成を分析したところ、タウポ火山の噴火との関連が判明。研究チームは氷層の年代をモデル化し、火山ガラス片がいつから氷床内にあったかを調べた。

見つかった7つの破片のうち1つは、オルアヌイ超巨大噴火で生成された火山ガラスと一致した。残る6つの破片はよく似た地球化学組成をしており、約2000年前のタウポの噴火と確実に関連していると研究チームは考えた。

「7つの破片を合わせて考えると、タウポ火山が噴出源だったことを示す独特かつ明白な二重のフィンガープリント(固有の特徴)が得られる」とピバは説明している。

タウポから約5000km離れた南極で火山ガラス片が見つかったことは、噴火の威力を示している。

「大噴火の噴煙は大量の火山粒子を空気中に飛散させ、それは風に乗って広範囲に拡散しただろう。噴火の年代を特定できれば、火山が大気や気候に及ぼし得る地球規模の影響を研究する機会が生まれる。噴火の歴史や挙動をより深く理解するために極めて重要なことだ」とピバは話した。

タウポの超巨大火山は現在も活動中と考えられている

ピバが主著者を務めた研究論文「Volcanic glass from the 1.8 ka Taupō eruption (New Zealand) detected in Antarctic ice at ~ 230 CE」(西暦230年頃の南極の氷から検出された1800年前のニュージーランド・タウポの噴火に由来する火山ガラス)は、科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。本記事の資料はビクトリア大学ウェリントンから提供された。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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