こうしたグラナイトの塊は、これまで見つかったことがなかった。研究結果は仏リヨンで開かれたゴールドシュミット会議で12日に発表され、科学誌ネイチャーにも論文が掲載された。
地球では、グラナイトは火山のマグマが冷却されて形成される。見つかったグラナイトは、35億年前に最後の噴火が起きた火山のものである可能性があるが、今も発熱を続けている。
これは驚くべき発見だ。これまで月のグラナイトといえば、1960~70年代のアポロ計画で採取された月の石の中に痕跡が見つかっていたのみだった。グラナイトの生成には、プレートテクトニクスなど地球に似た条件が必要と考えられてきた。
科学者たちは困惑
グラナイトが見つかった地域は、コンプトンとベルコビッチと呼ばれる2つのクレーターの間にあり、死火山のカルデラとみられている。惑星科学研究所の研究員で、テキサス州ダラスの南メソジスト大学の研究教授であるマシュー・シーグラーは「月の古い死火山と思われる場所の地下から高熱が発生していることを発見しました」と説明。「これを見つけた時、私たちは少々戸惑いました」と述べている。このグラナイトの塊は、噴火しなかったマグマが古い火山の下で冷えてできた可能性が高い。放射能があり、ウランとトリウムを含有しているとみられる。極寒の月面の中で、この地域の温度が高いのはそのためだ。
多数の火山
グラナイトの塊は、中国の月周回探査機「嫦娥(じょうが)」1号と2号が観測したマイクロ波データを使用して発見された。シーグラーは「地球にある大きなグラナイトの塊は、かつて多数の火山の元になっていました。現在、大規模なシステムが太平洋岸北西部のカスケード山脈の火山帯の元になっているのと同じように」と説明している。「今回見つかったグラナイトは、これまで月で生成されうると考えられていたものより、地球のものに似ています」
この発見がとりわけ重要なのは、地球と似た過程を経て生まれたと思われるからだ。本研究には加わらなかったフロリダ大学地質学部の准教授で米航空宇宙局(NASA)アーリーキャリアフェローのスティーブン・M・エラルドは「地質学的に見て、水とプレートテクトニクスなしでグラナイトを作ることはかなり困難であり、他の惑星でこの種の岩石が見つからないのはそのためです」と説明している。
「よって、もしシーグラーらの研究結果が正しければ、太陽系の他の岩石質天体の内部構造について考える上で、極めて重要なものになります」(エラルド)
月の裏側が地球から見えない理由は、潮汐の影響により月の公転周期と自転周期が等しい状態(潮汐ロック)にあり、常に同じ面を地球に向けているためだ。
(forbes.com 原文)