BoomyはAIはどう活用しているのか
Boomyの生成AIのアルゴリズムはどのように作られているのだろうか。ミッチェル氏に聴いた。「私たちは、Boomyに協力してくれるミュージシャンやプログラマーを集めて『ジェネレーター』というチームをつくり、独自に音楽生成のためのAIアルゴリズムを開発、鍛えています。Boomyのシステムを利用するユーザーから同意を得た上で、生成された楽曲をトレーニングに使用する場合もあります。一方で、第三者に帰属するIPを使う外部のトレーニングモデルは一切使っていません。だからBoomyはこれまでに楽曲の権利に関わるトラブルを起こしたことがありません」
Boomyのプラットフォームにはユーザーが作った楽曲の中に、第三者に権利が帰属する音源などが含まれていた場合、これにフラグを立てて迅速に公開を差し止める堅牢なレビュープロセスが組み込まれている。レビュープロセスの一部はAIにより自動化されているが、問題が含まれていると思しきコンテンツについてはスタッフが二重に審査する。
2023年は年初からOpen AIによるチャットボットAIの「ChatGPT」が脚光を浴びたことから、生成AIに対する世間の関心が急速に広がった。音楽業界でも、AIの台頭により音楽に携わるクリエーターやミュージシャンの仕事、収入が奪われるのではないかという声も聞こえ始めた。
ミッチェル氏はBoomyの目的が、あくまで「音楽を創作したくても、そのためのツールや知識、リソースが不足している多くの人々に、それぞれの情熱を追求するためのツールを提供すること」にあると強調している。
フェイクストリーム対策に尽力する
Boomyで生成された楽曲が大手音楽配信のSpotifyで配信され、これまでに両社の間で何度かの衝突が発生したと海外のメディアが伝えている。フォーブスでもニュースとして取り上げた。本件について、ミッチェル氏は振り返りながら次のようにコメントした。
「AIについてはその不正利用が多くの方々の関心が向く先なので、今回のように話題としてピックアップされたのだと捉えています。Spotifyに限らず、ほかの音楽配信プラットフォームもまた再生回数を不正に水増しするフェイクストリームの対策に日々奔走していると聞きます。このようなケースが発生した場合に私たちも課題を解決するために最大限の協力を惜しみません」