ミッチェル氏は今回のSpotifyで発生したフェイクストリームの件を含めて、生成AIの利用をめぐる諸処の課題について、関わる人々が真摯に向き合うことが大事なのだと強調する。
「多くの場合はAIそのものではなく、それを不正に利用する人間の意識と行為が問題の本質なのです。AIによる著作権侵害を防ぐために、Boomyは業界のリーダーたちと協力しながら多くのことに取り組んでいます。だからこそ、Boomyは大手の音楽配信サービスとの強力なパイプラインを維持できているのです」
機能強化と周囲への配慮。Boomyの成長戦略
Boomyに新しい機能を追加する大型アップデートも控えているという。その一端をミッチェル氏に聞くことができた。「1つはAIで歌詞を生成する機能です。ボーカルは音声合成が歌ってくれます。もう1つは生成AIによりテキストから作曲する機能です。後者について、機能を実装した場合にユーザーがどのような使い方をしたいか調査をしたところ、特定のアーティストやミュージシャンの『○○風の楽曲をつくりたい』というニーズが多いことがわかりました。Boomyとしてはユーザーの期待に応えつつ、アーティストの権利を損なわない手段を考え出す必要があります。AIのテクノロジーを活用すればとてもエキサイティングな音楽体験を届けることはできますが、周囲にもたらすインパクトについては慎重に検討を重ねて、ユーザーの反響を見ながら良いサービスにしていきたいと思っています」
AIによって音楽創作が自動化されることは、非倫理的なことではないとミッチェル氏はかねてより持論を唱えている。アコースティック楽器に始まり、シンセサイザーのような電子楽器が生まれ、デジタル・オーディオ・ワークステーション(DAW)によるデジタル音楽制作環境が整い、現在は生成AIがすべての人に音楽創作の喜びを伝えようとしている。次世代のデジタルミュージックツールに生成AIがなり得ることを、Boomyは照明しようとしている。音楽を愛し、リスペクトするミッチェル氏の手もとでBoomyがどんなサービスに育つのか、今後の成長を見届けたい。
連載:SCRUM FOR THE FUTURE
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