同社は、過去3年間に渡り「スーパーパイロット」システムを使った固定翼機の自律飛行試験を重ねてきた。試験では、万が一に備えてパイロットが同乗し、地上のクルーが飛行を監視している。
Xwingでコンプライアンスと品質の責任者を務めるアール・ローレンスは「航空業界はパイロット不足に悩んでいる。われわれも毎月、パイロットを新規採用して訓練しているが、成長するにつれて離職してしまう。私自身、民間航空機のパイロットなので、より大きな航空機を操縦したい気持ちは理解できる」と話す。
米連邦航空局(FAA)で航空機の認証担当エグゼクティブ・ディレクターを務めた経歴を持つローレンスによると、貨物機のパイロットになるためには1200時間の飛行経験が必要。待遇がより良い旅客機のパイロットになるためには1500時間の飛行経験が要求される。つまり、パイロットはXwingに採用された後、300時間の飛行経験を積めば、旅客機のパイロットに転職できる。
「10~20年前なら、航空会社は飛行時間の基準を満たしたばかりのパイロットを採用することはしなかった」が、今は人手不足が深刻なため、1500時間の飛行経験を得たパイロットはすぐにXwingを辞めて旅客機のパイロットへ転身してしまうのだという。
あらゆる規模の航空会社がパイロット不足に危機感を強めている。特に、大手の航空会社よりも乗客数が少ない地域航空会社にとって問題は深刻だ。
米地域航空協会のフェイ・マラーキー・ブラック会長兼最高経営責任者(CEO)によると、全米の空港の約72%に相当する308の空港がパイロット不足の影響でフライトの4分の1を失っており、小規模な空港ほど影響が大きい。さらに、今後15年間でパイロットの約50%が65歳の定年を迎えるというデータもあるという。
パイロットの「人材プール」を拡大
Xwingは、自律型航空機の運用によって業務をシフトし、退役軍人たちにも新たな職場の機会を創出しようとしている。「パイロットを排除しようとしているわけではなく、むしろその人材プールを拡大しようとしている。例えば、戦闘で足を失った退役軍人を採用しているが、彼らは操縦桿を操作する必要がない。当社は、彼らの経験とノウハウを必要としているのだ」(ローレンス)現在、XwingはFAAの認証の取得を目指している段階だが、ローレンスによると、同社のスーパーパイロットシステムは、座席数が19席以下の航空機であれば、機種に依存せず搭載が可能だという。
「将来的には、小型の旅客機にこのシステムが搭載されることがあり得るだろうし、最初から無人輸送を目指す企業も現れるだろう」とローレンスは語った。
(forbes.com 原文)