特筆すべきは、ソ連がS-200システムを道路を使って移動できるように設計したことだが、移動は作業員がこの重い装備をクレーンで大型トラックに載せてからだった。ウクライナ軍が5V28を地上の標的に向けて発射していることが明らかになったとき、テレンコは輸送方法を簡素化したのではないかと推測した。
前線近くに配備された5V28は、ロシアに占領されているウクライナの領土全域、そしてロシア領土の奥深くにいるロシア軍を脅かす射程を有している。ウクライナ軍は7月28日に5V28を発射し、ウクライナとの国境から約32km離れたロシア西部ロストフ州タガンログのロシア空軍基地をわずかに外した。
その3週間前には、国境から約180km離れたロシア西部ブリャンスク州の工業地域が5V28で爆破された。
ロシアは直近では8月12日に占領しているクリミアの上空で5V28を撃墜したと主張しているが、懐疑的になるだけの理由がある。ロシア側が撃墜の証拠として提供した映像はあまり説得力がないのだ。
「ロシアは5V28ミサイルを撃墜したという主張を繰り返しているが、迎撃映像とされるものに、AK27F/TG02推進剤が燃える時に出る黒褐色の大きな煙が空に漂うなど、一目瞭然の証拠が映っている映像はない」とテレンコも指摘した。
撃墜できなくても、ロシアに落ち度があるわけではない。最高速度がマッハ4の5V28は最大射程距離をわずか5分で通過する。大方の防空システムはこのミサイルを撃ち落とすのに苦慮するだろう。
新しい目標捜索装置を使っても、60年前に製造された5V28は例えば米国製の陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)ほど正確ではないかもしれない。だが、攻撃できる距離は同じだ。そしてもっと重要なのは、今すぐ使えるということだ。
米国のバイデン政権はこのほど、ATACMSの供与を約束した。ウクライナは最初の少量のATACMSが届くのを待っている間、扱いにくいが強力な5V28で何とか間に合わせている。
(forbes.com 原文)