「家族のコロナ感染は、以前から深刻な心理的苦痛と関係しており、身内のコロナ感染疑いや感染がうつや不安、ストレス関連障害などの精神疾患のリスク上昇につながっていることが複数の研究で明らかになっている」と研究者らは書いている。
また「新型コロナで家族を失った人は、そうした症状を最も抱えやすいかもしれない。死別は心的外傷後ストレス障害(PTSD)や複雑性悲嘆などの精神疾患のリスクを高めることが一貫して示されている」とも指摘している。
研究者らによると、コロナによる死別は特に複雑である可能性があり、その理由を「愛する人との別れを惜しんだり、葬式に集まったり、あるいは悲しみについてのサポートを受けたりする機会が限られているからだ」と説明する。
スウェーデンのカロリンスカ研究所のアニコ・ロヴィクらの研究チームは、2020年3月から22カ月間にわたってオンライン調査に応じた成人16万人のデータを収集した。調査参加者は英国、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンの住民だった。
研究では、親しい友人や身内がコロナを重症化させてから1年が経過した後でも、うつや不安の症状を抱えるリスクが高いことが明らかになった。
「集中治療室(ICU)に入院したコロナ患者の家族は、患者本人よりうつ症状を抱えやすく、またそうした症状の改善は遅い」と研究者らは指摘。「患者が人工呼吸器を長期にわたって使用した場合、患者の家族の半数は1年後にかなりのうつ症状があったと報告した」という。
「うつや不安の症状は、ICUでの治療を経て患者がコロナを乗り越えてもなくならなかったようだ。他の精神疾患がその後のうつや不安の症状を誘発している可能性がある。例えば、パンデミック(世界的大流行)以前でも、ICUで患者が死亡した後、その家族がPTSDや複雑性悲嘆を抱えるリスクが高いことが報告されている」と研究者らは付け加えた。
研究者らはさらに、このような長期にわたる精神面への影響の背景には、新型コロナが急速に広まり人々が最悪の事態に備える時間がなかったこと、罪悪感(特に患者にコロナをうつした可能性がある場合)、愛する人の面倒を見ることができなかったという精神的なショックなど、複数の要因があるのではないかと考えている。
実際、科学誌『PLOS One』に2021年に発表された研究では、スイスのコロナ患者の身内の15%がうつを、16.3%が不安の症状を抱えることが明らかになった。
研究参加者はさらに、身内が退院してから少なくとも30日間は症状が続いたと報告しており、これはコロナ患者と身内の心理的苦痛の予防に役立つ戦略を考える必要性を示している。
報道向け資料の中でロヴィクは 「この問題について注意喚起したい。コロナ患者の家族や親しい友人を観察下に置き、必要に応じて適切なメンタルヘルスのカウンセリングを紹介することで大きな違いが生まれる」と指摘している。
(forbes.com 原文)