経口の錠剤であるパキロビッドは2021年12月にFDAの緊急使用許可を得た。感染後早い段階で飲む薬で、とくに、年齢や持病などによって重症化するリスクが高い患者の入院や死亡を防ぐ目的で使用される。
21日に米医学誌「JAMAネットワーク・オープン」に発表された観察研究では、2022年から2023年初めを対象期間として、米オハイオ州の医療機関クリーブランド・クリニックの患者数千人の電子健康記録を解析した。これまでと異なり、臨床試験ではなく実臨床(リアルワールド)のデータを使ってパキロビッドの有効性を調べた。
臨床試験の結果より有効性がかなり低くなった理由はわかっていない。研究チームは、臨床試験は限定的な自然免疫しかもたないワクチン未接種者が対象だったのに対し、今回の研究ではワクチンを接種済みの人や、以前にも感染したことがある患者なども含まれる点を指摘している。
また、臨床試験は変異株のデルタ株が主流だった時期に行われたが、研究の対象期間はオミクロン株が主流だったことにも言及している。パキロビッドはウイルスの系統によって効果が変わる可能性があることも示唆される。
重症化リスクの患者にはなお推奨
今回の研究では、新型コロナに対する別の経口抗ウイルス薬である米メルクの「ラゲブリオ」についても実臨床での有効性を調べた。こちらは、入院または死亡の予防効果が42%、死亡に限定した予防効果が77%という結果だった。研究チームはパキロビッドとラゲブリオについて、新型コロナとの闘いでは引き続き有効な手段であり、重症化を防ぐために入院前の患者に使うことができるとの見解を示している。
米国では今秋、感染拡大の新たな波が起こると懸念されている。米疾病対策センター(CDC)によると9月9日までの1週間の入院患者数は2万538人で、前の週に比べ7.7%増えた。パンデミック(世界的大流行)の開始以来、米国では約114万人が新型コロナで死亡している。
論文の筆頭著者である米ノースカロライナ大学のダンユー・リン教授はブルームバーグの取材に、パキロビッドは「高リスクの患者に対しては間違いなく推奨される」と述べている。
(forbes.com 原文)