「良くも悪くもないとき」にはファンドの規模が重要になるかもしれない
VCファンドの規模が実際に重要になる可能性がある唯一のケースが、会社の状況がどちらとも言えない中間的な状況にある場合です。好調とは言い切れないけれども、明らかに悪化しているわけでもない、そんな状況です。例えば、四半期の成長指標が冴えないときや、重要なチームメンバーを失ったときなどが挙げられます。
そのようなときにこそ、自分たちのビジネスに対する深い理解があり、追加投資をしてくれるかもしれない既存投資家の存在が重要になるのです。
Coral Capitalでも、投資先であるからこそ知り得た様々な非公開の情報のおかげで、一般の市場がまだ気づいていない段階で将来性の高い企業に投資できることがあります。
ただし、これは極めて重要な点ですが、決してそれらの企業を「救済」するためだけに投資したわけではありません。信頼性の高い情報や知見に基づき、未開拓のアップサイドがあると判断したからこそ投資したのです。
たとえこの中間の状況にあったとしても、荒波を乗り切るために必要な資金は実はそれほど高額ではないことが多いものです。
ランウェイがあと数カ月あれば再び「良い状態」まで回復できるというなら、投資家の「ポケット」もそこまで「ディープ」である必要はありません。
しかも、たとえ資金力に優れた投資家と組めたとしても、会社が明らかに好調でない限り多額の出資が行われることはまずないでしょう。
実際、将来的に多額の出資を見込んで規模の大きい海外投資家を選んだにもかかわらず、その後の資金調達ラウンドでは明らかに好調な業績を示せなかったため、全く出資してもらえなかったというケースを私はいくつも見てきました。
大型のファンドにアクセスできることは心強いかもしれませんが、VCを選ぶ際の決定打にするべきではないでしょう。あくまでも数ある様々な要素のうちの1つです。
資金以外で何を提供してくれるか、評判はどうか、人間的に好きかどうかなど、他にも考慮すべき点はたくさんあります(特に最後の点に関しては、今後何年も協力していくことになるにもかかわらず、驚くほど軽視されがちです)。
投資額だけではなく、もっと広い視点で考えることが重要です。パートナーとなる投資家の規模はある程度の規模があったほうが良いですが、巨大である必要はありません。ビジネスの長期的な成功のために何が本当に必要なのかを考え、総合的に判断しましょう。
連載:VCのインサイト
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