中国が経済を再開しても、広く予想されていたようには成長が戻らなかった。原因については、次のような説明がされている。新型コロナ禍で傷ついた消費者は、コロナ禍後も支出を手控え貯蓄をした。経済再開による追い風よりも、不動産部門の急激な悪化による逆風のほうが強かった。ロシアのウクライナ侵略によるインフレは輸出部門にとって大きな打撃になった。ジョー・バイデン米政権が重要技術に対する中国のアクセスを制限した結果、企業にダメージが広がった。
共通するのは、30年にわたってうまく機能してきた中国モデルが、存亡の危機に立たされているという認識だ。中国は世界を揺さぶるような危機には陥らないとしても、2030年あるいは2040年までに経済規模で米国を追い越すのに必要な急成長は、もう終わったように見える。
これが習近平率いる中国共産党にとって危機的な局面なのは間違いない。中国共産党の正統性は、5%をゆうに超える経済成長率にかかっているからである。もっとも、中国では広範な世論調査は行われていないというか認められていないので、14億人の国民や500人の党幹部が習近平の仕事をどう評価しているのかを知ることはできない。
習近平にとっての真の課題は、中国経済のどの火種にまず対処するかを見極めることだろう。GDPの最大3割を生む不動産部門は、中国経済の減速の一因になっている。この問題の根深さは、いまも尾を引く日本の1990年代の不良債権問題と通じるところがある。
それについては、20年以上にわたって量的緩和の沼にとらわれたままの日本銀行の姿を見るだけでいい。日銀の植田和男総裁が緩和縮小を示唆するだけで、日本はデフレに逆戻りするおそれがあるし、世界のマーケットを動揺させる危険もともなう。