・汎用型生成AIの導入
調査やライティング、要約ツールといった幅広い使用事例に費やされる金額は、2030年までに年間420億ドル(約6兆2015億円)に上るだろう。この金額の50%以上は、チャットボットやコミュニケーションプラットフォームに投じられ、顧客体験や従業員体験の大幅改善をあと押しすることになる。例えば、クラウド通信サービス会社Twilio(トゥイリオ)は2023年6月、セールスチームとマーケティングチームのやりとりを改善するために、自社の顧客エンゲージメントプラットフォームに生成AIを導入した。Cookieに依存しないパーソナライズサービスで、顧客とのコール内容をまとめた要約とセンチメント分析をもとに、顧客プロフィルを構築するという。
言語学習プラットフォームDuolingo(デュオリンゴ)も2023年3月、新しい上位のサブスクリプションプラン「Duolingo Max」を発表した。オープンAIの言語AI「GPT-4」を搭載したチャットボット2つを活用できるプランで、1つはユーザーの間違いを解説し、もう1つはロールプレイの相手役を務めるという(Duolingo Maxは英語話者向けのスペイン語とフランス語コースにおいてiOSで利用可能。日本国内では利用できない)。
・新しい売上機会
生成AIが普及すれば、生成AIを自動化や製品開発のために導入していない企業以外でも、新たな売上機会を獲得できるチャンスが生まれる。例えば、コンピュータのプログラミングで困ったときに質問できる人気のインターネットフォーラム「Stack Overflow(スタック・オーバーフロー)」は、サイト内で交わされたQ&Aデータを有料化して、大手のAI開発者に販売する計画だ。顧客となるAI開発者は、こうしたデータを利用して、アルゴリズムやボットを訓練することになる。また、半導体企業エヌビディアの株価が2023年上半期、3倍に上昇したが、これは、GPT-4などのモデル訓練で同社製GPUチップが使われているためだ。
ただしフォレスターによれば、多くの企業が生成AIに多額を投じ始めるといっても、短期的には、導入と生産性の向上は伸び悩むという。生成AI技術は目下、問題を抱えているからだ。
例えば、規制が曖昧で、知的所有権をめぐる問題や、生成AIモデルの倫理と偏見にまつわる問題に加えて、事実とは異なる内容を生成する「ハルシネーション」の問題もある。しかしいずれは、生成AIの活用と有効性は飛躍的に伸び、ひいては労働市場にも影響がおよぶだろう。
フォレスターの予想によると、米国では、2030年までに自動化の影響で失われる専門職、科学分野、技術サービス、金融、保険、企業マネジメント業界の仕事のうちの半分以上を、生成AIが占めることになる。生成AIは、取って代わる仕事以外にもその影響を及ぼし、労働者の働き方や業務の進め方を再構築するだろう。
(forbes.com 原文)