「世帯で1つ」が──
田中さんが語るアップデートは、表面的には女性を救う、女性のための変容のように捉えられがちだが、「社会を自ら変えることができる、そして私は私を生きることができる」というマインドは、性別を超えて人間そのもののあり方、社会そのもののあり方の未来を示すものだと感じられる。「世帯で1つね」という考え方が女性への支配を生む構造であるならば、それは男性に対して「世帯まるごとの責任を取れ』という社会的圧力を生んでいると言えるかもしれない。
妊娠出産によるキャリアの断絶が女性を経済的に弱い存在にしてしまうものであるならば、それは男性に対して「ドロップアウトは許されない』という強迫観念を生んでいると言えるかもしれない。
そういった社会的圧力、強迫観念、固定概念、それらが男性を不自由にしているという側面も確かにあり、強いからといって好きに生きられるわけではない。
自分の人生を生きるための「解放」を
離婚における女性側のマイナスを男性に寄せて痛み分けしようとしたり、そっちはずるいと責めて相手にも負荷をかけようとしたり、誰かの負担をどこかに押し付ける方法ではなく、誰かを解放することが、他の誰かの解放に繋がるあり方が、田中さんの語る「私たちのありたい未来に私たちは社会を変えることができる」ということなのだろう。この『プレ・シングルマザー手帖』は、プレ・シングルマザーが新しい生活に踏み出すきっかけを作ると同時に、夫婦関係を解消するすべての人が、自らの人生を選択し、自分の人生を生きるための「解放」を生み出す本だ。
そういった観点で、離婚なんて考えたことのない男性も、結婚なんてまだ先だと思っている男性も、ぜひ手に取って欲しい。
自分を生きようともがく人へ、1冊でも多く『プレ・シングルマザー手帖』が届くことを願う。
南部彩子(なんぶ・あやこ)◎日本IBMから複数のベンチャー企業、NPO勤務を経て独立、現在はパーソナルスタイリングのリワードローブ取締役。子育て中の女性、経営者、シニアまで幅広いユーザーへ服のスタイリングを提供、人が自分らしく装い、個性を楽しむ社会を望む。様々な職場環境と福祉現場の経験を持ち、「それぞれの個性が活きるダイバーシティ」がライフテーマ。スタイリストである経営パートナー川村梨沙との実践着回し解説動画(音声あり)