だが、学術誌Journal of Geophysical Research: Planetsに掲載された最新論文で、カリストをめぐる新たな謎が明らかになった。最新のモデルによると、カリストの大気には、数十年来のモデルで示されていたよりもはるかに多くの酸素分子(O2)が含まれているというのだ。
同誌を発行する米国地球物理学連合(AGU)は「木星の衛星の中で2番目に大きいカリストは、大気中に酸素分子が存在することが、過去の観測で明らかになっている」と説明。「この大気中酸素は、木星の磁場がカリストの氷表面と相互作用することで生成されると考えられていた」と述べている。
だがそれでは、観測と一致するだけの十分な酸素分子ができないことが、今回の最新研究で明らかになった。つまり、カリストでは、何か別の形で酸素分子が生成されているということだ。
論文の筆頭執筆者で、米カリフォルニア大学バークレー校惑星科学部の博士研究員のシェーン・カーベリー・モーガンは、電話と電子メールで取材に応じ、今回の研究結果は、カリストの酸素分子の発生源と、酸素分子の寿命の推算値を再評価する必要があることを示していると語った。
カーベリー・モーガンによると、このような衛星には、水(H2O)を主成分とする氷が存在しており、宇宙空間から飛来し、衝突・貫通する荷電粒子によって水の分子結合が切断される。この水素と酸素はその後に再結合し、水素分子(H2)やO2、過酸化水素(H2O2)などの新たな分子を形成するという。
生命探査の候補にはならず
カリストの環境は極寒で、固有の磁気圏が存在せず、活発な氷火山活動の兆候もない。それでも、地球の生命に必要な水は存在している。だがカーベリー・モーガンによると、外太陽系(太陽系の小惑星帯より外側の領域)に位置するカリストの温度は低く、水は主に氷の状態で存在しており、表面からは氷由来の水蒸気が放出されている。