ヘルスケア

2023.09.13 12:00

「マスク」が消えた米国の医療現場、新型コロナ感染拡大の中

私はMGBの感染対策責任者であるエリカ・シェノイ医学博士に連絡を取り、彼女が「医療従事者が患者からのマスク着用要求を拒否することを許すポリシーの主要な作成者」であるかどうかを尋ねた。

さらに「また、その論理的根拠を明確に説明していただけますか?」「それは、患者に合理的な対応措置を提供する必要性に該当するのではありませんか? エアロゾル感染は新型コロナの主要な感染経路なのではありませんか?」と質問した。

私が受け取ったのは広報担当者からの返信で、一連の質問に答える代わりに「医療従事者が患者からのマスク着用の要求を拒否することを許すポリシーは存在しません」と書かれていた。

ニューヨーク大学グロスマン医学部、医療倫理学教授のアート・カプラン博士は、病院や介護施設でマスク着用義務を廃止することの倫理性について質問されると、それは「完全に無責任」であるとためらわずに宣言し、「常に脆弱な人々の近くにいるのです」「マスク着用が病院や介護施設などの環境で成功していることは証明されています」と彼は指摘した。

医療スタッフの中には、マスクをしないことを選ぶのは自分たちの「権利」であると主張する人々もいる。これは道徳的な問題であり、医療従事者にとっての「自由」の1つではないとカプランは強調した。彼は倫理規定を挙げて「第一原理として、医療従事者は患者にとって最大の利益となることをしなくてはなりません。『自分にとって最善だと思うことをするべき』ではありません」と付け加えた。私が教えられた医療の第一原理は「害を与えてはならない」だった。医療従事者によるマスク着用の拒否は、特に患者からそうするよう要求されたとき、その原理に反している。

CDCや米国の地方自治体はすでに、新型コロナ感染に関する信頼できるタイムリーなデータの収集や報告を行っていない。多くの場所で、週次報告から外され、月次報告のみになっている。下水中のウイルス量調査が、最良の指標だが、一部地域でしか得られていない。「CDCと提携しているバイオテック企業であるBiobot Analyticsのデータは、下水内における新型コロナウイルスの量は、2020年冬に初めて急増し始めたときと同程度を示している」と9月1日にCNNは報じている。

入院件数は8月に2倍に増え、検査陽性数は過去2カ月で3倍に増えた。

一連のあらゆる要素と、無症状の人も新型コロナを感染させられてしまうという事実を踏まえると、病院、介護施設、その他の医療施設がマスク着用を廃止することは、まったく意味をなさない。HICPACがその計画に対する市民の怒りに耳を傾けたのかどうかは、11月になればわかるだろう。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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