3. 日本経済を後押しするエンジェル投資家として
Chatworkの上場成功により、資産を築いた正喜氏。しかし彼は、その資産が自分のお金だという認識はない。というのも、スタートアップのエコシステムによって育まれたお金であり、エコシステムに還元すること、また社会貢献のためにその資産を活用することが自らの義務だと考えている。では、その具体的な実現手段とはなんだろうか。────それがまさにエンジェル投資である。
正喜氏は上場企業社長という肩書きで、2020年からエンジェル投資をスタートし、今まで計84社にエンジェル投資を行ってきた。日本最大の投資件数を誇るエンジェル投資家である。
基本的に1度の投資額は500万円以上と決めており、どのような基準で投資先を決めているのか、正喜氏は次のように語る。
「投資する条件として、1つ目は僕自身がその事業の世界観に共感できるか、2つ目は起業家がその事業に対して真摯な思いがあるか、3つ目はビジネスモデル(利益の生み出し方)が適切であるかどうかを見ています。」
他にも、地方発の企業であったり女性起業家に対しては、マイノリティを応援したいという気持ちから加点ポイントが加わるそう。そこには、正喜氏自身が東京ではなく大阪で起業したからという背景があるらしい。
4. 中小企業を支援するChatworkスーパーアプリファンドの正体とは
Chatwork社としても積極的にベンチャー投資を行っており、Chatworkと将来的なビジネス連携の可能性がある分野への投資を行っている。また、中小企業のDX化支援を自社として積極的に進めていくため、投資先企業も同じビジョンを持っていることがその投資の条件であるといえるだろう。具体的にはBPaaS(業務プロセスそのものをクラウド経由でアウトソースできるサービス)領域がChatworkとのシナジーが強く、投資ニーズがあるという。最後に、挑戦をする起業家たちにメッセージをお願いした。
「日本は、自分ひとりが何をしても社会は変わらない、変えられない。そんな諦めにも似た日本社会の閉塞感や国民性もあってか、チャレンジする人がとても少ない。その中でもリスクを負って飛び込んで起業する人たちを僕は国の宝だと思っているんですよね。そういう人たちを応援していきたいので、一緒に頑張っていけたらなと思っています。」
スタートアップの良さは、たとえ失敗したとしても投資してもらった資金は借金にならずに何度もチャレンジし直せるところだ。
STARTUP DBの調査では、2022年のスタートアップに対する年間投資額は約1兆1386億4800万円であり、政府は「スタートアップ育成5か年計画」(※2022年11月発表)の中で、年間投資額を2027年度に10兆円規模へ増やす目標を掲げている。
今、変わりゆくスタートアップ業界の中で、最もリソースが足りていないのはまさに“起業家”である。
次世代の起業家は、今この記事を読んでいるあなたかもしれない。