アート

2023.09.30 12:30

目先のことばかり見ていないか? 日本各地で起こる「本末転倒」

鈴木 奈央
中道:それは日本全体に言えることだと思います。ツーリストが求めているのは、彼らのために用意されたものではない。

仲西:そこがずれていますよね。一時的な経済効果を狙ったようなことが主流になっていて、目の前のことしか見ていない。それは本当に日本の問題だと思います。

中道:目先のことに合わせてばかりいて、本当の日本の良さがどんどんなくなり始めていることにものすごい危機感を持っています。

さて、KYOTOGRAPIEは今年の春に11回目が終わりましたが、これまでにどんな進化がありますか。

仲西:まだそんなに名前が売れていない日本のアーティストが海外で注目されて、出版が決まったり、展覧会が決まったり、作品が売れたりということが起きています。本当にやってよかったなと思っています。また、社会問題や環境問題など、日本のメディアがなかなか流さないような問題をあえて取り上げています。展示を見た人たちの意識を少しでも変化させることができていればいいのですが。

中道:スタートした時の大きなミッションがある程度形になっている感じですね。KYOTOGRAPIEは町全体を使った表現の仕方がユニークですよね。
アーティスト高木由利子の展示(Photo by Kenryou Gu)

二条城 二の丸御殿 台所・御清所でのアーティスト高木由利子の展示(Photo by Kenryou Gu)


仲西:京都は建てものが古いですし、襖や障子が多く壁も砂壁なので、そういったものを傷つけずに作品を展示するのがすごく大変です。だけどそういうものを生かした新しい展示方法を模索したことで、KYOTOGRAPIEのオリジナリティが生まれました。アートは美術館やギャラリーで見るもので、わかる人にしかわからない敷居が高いものだと思っている日本人が多いので、既存の建物に展示すればアートが民主化されるんじゃないかと思っています。

中道:京都では代々受け継がれている美術品やコレクションが家の中に置いてあって、歴史も風習もみんなセットになっていて、意識していなくても展示されているように見える。日本はそういうものを持っているんですよね。

仲西:そうです。でもその宝に気づいていないんです。

文=久野照美 編集=鈴木奈央

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