新型コロナ患者も増えるがRSウイルス感染者も急増中、米国

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米国内の多くの地域で新型コロナウイルの感染者数が増加する中、別のウイルスも急増している。RSウイルス(RSV)が、フロリダや他の南東部の州で救急外来や入院の件数を増加させており、来週には米国全土に影響を及ぼす可能性がある。RSV患者の急増により、米国疾病予防管理センター(CDC)は今週、アラートを発令し、臨床医や介護者にRSVを示唆する症状のある患者に注意するよう勧告した。

RSウイルス(RSV)とは?

RSVは1950年代に初めて発見されたRNAウイルスで、幼児たちの呼吸器疾患の主要な原因として長らく認識されてきた。実際、RSVは1歳未満の子どもたちの気管支炎(つまり、肺の細い通路の炎症)の最も一般的な原因であり、毎年約6万人の子どもが米国で入院している。全世界での感染者数は6400万人、死亡者数は年間16万人にのぼると推定されている

多くの場合、症状は軽度であり鼻水、咳、軽い頭痛、軽い発熱をともなう。しかし、幼児や高齢者、免疫が低下している人々では、症状が重くなり、喘鳴、強い咳、呼吸困難を引き起こす可能性がある。

病気の治療や予防のために何ができるか?

新型コロナウイルスと同様に、RSVは感染者が咳やくしゃみをする際に発生する呼吸器の飛沫によって広がる。長年にわたり、RSVからの保護の最善の手段は、優れた手指衛生および咳やくしゃみをする際に口や鼻を覆うことであった。

新型コロナウイルスの大流行中、RSVの発症率は激減したが、これはソーシャルディスタンス、マスク、移動の制限などの要因の組み合わせによるものと考えられる。しかし、新型コロナ大流行に対する注意が解除されるにつれて、RSVの発生率は増加し、北半球での秋と冬に症例が急増する典型的な季節的なパターンに戻る可能性が高い。幸い、2023年には、RSV感染による重症を予防するためのいくつかの新しいツールが食品医薬品局(FDA)によって承認されている。

最初のものは、ニルセビマブというモノクローナル抗体で、筋肉内注射で投与される。CDCは生後8カ月未満のすべての乳児に推奨している。この予防接種は、免疫不全の子どもや重症化するリスクのある生後8カ月から19カ月の幼児にも推奨されている。臨床試験では、ニルセビマブが少なくとも5カ月間の保護を提供し、感染した乳児の入院および医療受診の発生率を80%削減することが示された。

いくつかの新しいRSVワクチンもFDAの承認を受けている。60歳以上の成人には、2つの組み換えタンパク質ワクチン(RSVPreF3およびRSVpreF)が利用可能となり、下部呼吸器疾患を予防する効果が80%以上であることが示されている。米国時間2023年8月21日、RSVpreFは妊娠32週目から36週目までの妊婦に対する投与がFDAにより承認された。ワクチンを接種した母親から生まれた乳児は、出産後少なくとも6カ月間、重度の下部呼吸器疾患からの高い保護率を示している。

これらの新しいツールは、米国で毎年1万5000人近くが死亡してきたウイルスとの闘いにおける革命的な進歩である。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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