サイエンス

2023.09.05 15:00

老いた体を若い体と結合 「パラバイオーシス」の若返り効果、マウスで確認

生物学的年齢の測定方法はいくつかあるが、最も正確な手法の1つは「エピジェネティック時計」を用いるものだ。スティーブ・ホルバートが2011年に発見した手法で、DNAのメチル化として知られるプロセスに基づいている。遺伝子コードであるDNAそのものは生涯を通じて変化しないが、その発現の仕方は変化する。これをエピジェネティクスと呼ぶ。

DNAメチル化はエピジェネティクスの重要なメカニズムであり、メチル基と呼ばれる分子がDNAの塩基配列に付加されることで、特定の遺伝子の発現が制御される。ホルバートの先見の明は、DNAメチル化の過程にはパターンがあり、それは時間経過に沿って追跡可能で、生物学的年齢と相関していると見抜いたことだ。このパターンが分かれば、DNAのメチル化を時計のように読み取ることができる。

若々しく長生きする

ボーハン・チャンらの研究チームは、エピジェネティック時計を使って、パラバイオーシスがマウスに与える影響を調べた。すると、若いマウスと結合された老齢マウスでは、老化のスピードが遅くなるのみならず、若返りの兆候さえ確認できた。DNAメチル化時計が示唆する生物学的年齢は常に実年齢よりも若く、最大で30%低かった。

この現象は、老齢マウス同士を結合したパラバイオーシスでは見られなかった。また、血液を共有しない形で若いマウスと結合した老齢マウスでも確認できなかったため、若いマウスと結合されたことで運動量が増え、エピジェネティック年齢が若返った可能性は排除された。

重要な点は、老齢マウスの生物学的年齢の変化が、若いマウスから切り離された後も持続したことである。しかも、その変化は血液だけにとどまらず、筋肉組織、肝臓、神経系にも及んだ。

生物学的年齢の若返りは寿命の延長とも相関しており、若いマウスと結合された高齢マウスは、老齢同士で結合されたマウスと比較して6~9%長生きした。遺伝子発現の変化も、寿命介入で観察されたものと類似しており、加齢の過程で通常見られる変化とは対照的だった。

まとめ

この刺激的な研究では、年老いたマウスを若いマウスと結合することで寿命を延ばし、老化を遅らせられることが示された。この方法の効果は分離後も持続する。老齢マウスは寿命が延びただけでなく、臓器の健康状態も改善の兆候を示した。

実年齢は不可逆的だが、生物学的年齢はますます可逆的なものになりつつあるようだ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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