地球を毎日撮影しているこの世界最大の衛星コンステレーションを保有する米プラネット社(本社カリフォルニア州サンフランシスコ)は、生の画像データを米マイクロソフトのエンジニアたちに提供した。彼らはそれを使って、災害の影響分析用のAI(人工知能)モデルをトレーニングした。AIモデルは火災前後の画像を比較し、最も被害の大きいエリアを明確に示した地図を作成した。
米赤十字はそれを参考にして、最も緊急度の高いエリアに優先的に対応できるようその日の現地での活動を再調整し、数千人の避難を支援した。この山火事による死者はこれまでに100人を超え、米国内の山火事による犠牲者としては過去100年で最多となっている。依然として1000人以上の安否がわかっていない。ハワイ州のジョシュ・グリーン知事によると、復興には60億ドル(約8700億円)かかると見積もられている。
プラネット社とマイクロソフトが衛星画像をこれほど迅速に取得・解析できたのは、前回このシステムを実地で使おうとした際にうまくいかなかった経験があったからだ。それはロシアがウクライナに対して起こした戦争に際してのことだった。以前のシステムでは、コンクリートの背景の中で倒壊した建物を正確に認識できないという根本的な欠陥があった。両社は欠陥を修正するAIツールを1年半かけて開発し、それが今回の成功につながった。
「ウクライナ(での戦争)が起きた時、AIモデルはことごとく悲惨な失敗に終わりました」マイクロソフトのAI研究ラボのチーフサイエンティスト、フアン・ラビスタフェレスはフォーブスの取材でそう振り返った。