中で一人の教職員から「先生方4、5人で集まり、毎週1回、授業開始前に15分の朝会議をやっています」という紹介があった。さらにそれが、「充実していて本当に大切な時間なのですが、さらに質の高い、充実した会話の場にしたい」と、会議をファシリテートする方法、対話をより充実させる手法についての相談となった。
以下が塩瀬氏からの回答である)
会議において内容と方法を切り離してみてはどうか
いろいろ方法はありますが、僕ならまず、「会議の仕方を考える会議」をはさんでみることをおすすめしたいと思います。これは今の方法にとらわれないために、1度、内容と方法を切り離して、他の方法を試してみるやり方です。たとえば、週1定例の15分の会議があるとします、おそらく冒頭から「今日のテーマは──」と前日に仕込んだ、あるいは事前に通知したテーマで議論するという方法が定着してしまっているのではないでしょうか。それを壊してみる。1回決めたフォーマットを疑ってみる
一般企業でも、大学でも同じだと思いますが、たいていの定例会議は、1回作ってしまったフォーマットに乗ったまま毎回、議題だけ変える。でも実は、そのフォーマットに向いているテーマもあるし、合わないと思い込んで提案を避けてしまうテーマもあって、もしかしたら、一人一人の先生方はその不消化を抱えたままモヤモヤしているかもしれません。15分という制限があるので、裏を返せば「15分で結論が出そうな話しか話題に挙げない」ということにもなりかねません。そういうときは、たとえば、会議アジェンダを事前にきめず、あえて「その場でみんなでテーマだし」をやってみるなどはどうでしょうか。
15分で結論が出そうにない、朝会議にふさわしいかどうか自分のなかで納得できていない、しかしいまとても自分の頭の中をめぐっている関心事、がポロっと出てくるかも知れません。
さっそく次週の朝会議で、もしよかったら「テーマなし朝会議」をお試ししてみてください。騙されたと思って。もしかするとそこから「話し合うべきテーマ」が立ち上がってくるかもしれませんし、何にも出てこない雑談で終わる可能性もあります。雑談が2回続いたら、次は元に戻してください。会議の進め方にもそのような余白をぜひ。
生徒たちに向き合う先生同士が、しっかり話し合えるファシリテーションのコツは?
ファシリテーションに関して、「見ざる・言わざる・聞かざる」ワークショップという練習方法を紹介します。これは3人の参加者に、それぞれアイマスク、口にマスク、耳栓をそれぞれお渡しして、疑似的に3サル状態でディスカッションをしてもらう方法です。この3人でのディスカッションはめちゃくちゃ難しい。なにしろ、聞こえない人にとっては発言を誰かに文字にしてもらわないといけないし、見えない人は他の2人の表情もその文字も見えないので言葉を耳でききたいし、言えない人は見て聞いて考えられるのに急いでも文字で伝えられるペースが遅く、と大変苦労をしながら3人で話し合いをします。
しかし、この3人を助けるのが4人目のファシリテーターの役割です。「見えない人が状況がつかめてないので、聞かざるさん説明してあげてください」「聞かざるさんにさっきの台詞が届いてないので、言わざるさん、文字で説明しては」などと、抜け落ちている情報を手早く拾い集めることが大切です。