ただ、ファシリテーターを務める先生も、同じように学校のなかで感じている問題意識があり、解決のためのアイデアをもっていることもあるので、ついつい中身に入ってしまうんです。会議において、内容と方法を切り離すというのは、その意味において大切なのです。ファシリテーションも、会議の運営方法も、内容と切り離した状態でその方法を洗練させていくのです。
内容と方法を切り分けることで得られること
不登校特例校という仕組みづくりにも共通することだと思うのですが、学校に行くということと、学びたい、友達づきあいをしたい、社会のルールを学ぶ練習の場、というのを一度立ち止まって切り離して考えることが大切です。それをぜんぶごちゃまぜにしてしまうので、学校にいけないことはよくない、だから学校に行きなさい、という短絡的なプレッシャーの言葉に置き換わってしまうのです。学びたいのに学べない、ということが一番大きな問題なので、必ずしも勉強が嫌いで学校に行かないといっているわけではないのです。学校が変わるだけで、水を得た魚のように教科書を読み進めて勉強に励む生徒だってたくさんいますし、友達付き合いだって同じことです。
これは学校だけでなく、行政や会社の会議でも同じことが言えますが、とくにそれまでうまくいっている期間が長ければ長いほど、その方法を疑うというのが難しくなる。当然ながら変えにくい。でも変えられない期間が長引けば長引くほど、余計に変えようという敷居がどんどん高くなっていく。そういう意味では、日常のなかに小さな変化を常に入れておくこと、変えることの敷居を下げておくことが大切で、変えてうまくいかなければもう一度変え直せばいいと腹をくくることです。この学校づくりには、そういうヒントがたくさん詰まっているように思います。
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塩瀬隆之◎京都大学工学部精密工学科卒業、同大学院工学研究科修了。2014年7月京都大学総合博物館准教授。2018年より経済産業省産業構造審議会イノベーション小委員会委員および若手WG座長、特許庁知財創造教育調査委員、文化庁伝統工芸用具・原材料調査委員、日本医療研究開発機構プログラムオフィサー、2025年大阪・関西万博政府日本館有識者など。2017年度文部科学大臣表彰・科学技術賞(理解増進部門)ほか、受賞多数。